マイナンバー最前線

【マイナンバーを取り扱う具体シーンごとの注意点】第6回

社員の扶養家族のマイナンバーを取り扱う際の注意点

水町 雅子=五番町法律事務所 弁護士

【2016/01/13】

 連載第2回から第5回までは、社員のマイナンバーを取り扱う場合の注意点を述べた。今回は、社員の扶養家族のマイナンバーを取り扱う場合の注意点を考えていく。<A社が、給与所得の源泉徴収票の作成事務のために、社員の番号太郎さんの扶養家族である番号花子さんのマイナンバーを取り扱う場合>を想定し、マイナンバーを取り扱う際の注意点を述べる。

 社員の扶養家族のマイナンバーを取り扱う際のポイントは、3点ある。1点目は取得対象の限定、2点目は本人確認、3点目は利用目的の明示等である。これらの点以外は基本的に、社員のマイナンバーと同様の点に気をつければよいだろう。

1.社員の家族全員からマイナンバーを取得するわけではない

 マイナンバー法では、法令上認められた場合以外に、マイナンバーの提供を求めたり、マイナンバーを収集したりすることを禁止している(マイナンバー法15条、20条)。

 社員については、給与を支払う以上、会社は社員のマイナンバーを取り扱うことになる。これに対し社員の家族については、必ずマイナンバーを取り扱うというものではない。マイナンバーは社会保障手続きと税務手続きのために利用するものなので、この手続き上、マイナンバーを必要とする家族に限って、マイナンバーを取得する。

 例えば、社員給与に関する税務手続きとして、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」がある。この申告書には原則として、控除対象配偶者、控除対象扶養親族(16歳以上)、16歳未満の扶養親族のマイナンバーを記載する。そのほか、例えば健康保険に関する手続きは今後、健康保険組合等から様式が提示されるはずだが、健康保険に加入する扶養家族のマイナンバーを手続き書類に記載することになる。

 つまり、会社が社員の家族のマイナンバーを取り扱ってよいかは、会社が行う手続きで、社員の家族のマイナンバーを必要とするかどうかによる。手続き上マイナンバーが必要かどうかは、その手続き書類中にマイナンバー記載欄が用意されているかを確認する方法が、最も簡便であろう。ほかにも、国税庁や厚生労働省のFAQページを参照したり、これらの所管官庁に問い合わせたりしてもよいだろう。

2.本人確認


(1)多くの場合、会社は扶養家族の本人確認を行わなくてよい

 多くの場合、会社には社員の扶養家族の本人確認を行う義務はない。社員を経由して扶養家族のマイナンバーを取り扱うケースの多くは、本人確認義務が会社ではなく社員にあるからだ。もっとも、国民年金第3号被保険者手続きについては、本人確認義務が会社にあることをご存じの方も多いだろう。

 この違いは何なのか。本人確認義務はマイナンバー法上、マイナンバーを取得する「個人番号利用事務実施者」または「個人番号関係事務実施者」に生じる(マイナンバー法16条)。このため、社員が「個人番号関係事務実施者」に該当する場合は、社員に本人確認義務が生じ、会社には生じない(なお、社員が「個人番号利用事務実施者」に該当するケースは想定しにくい)。そして社員が会社と扶養家族の間に入っている場合でも、社員が「代理人」に該当するなどして「個人番号関係事務実施者」に該当しない場合は、会社に本人確認義務が生じる(図1)。

図1●本人確認義務は会社と社員のどちらにあるか
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 では、「個人番号関係事務実施者」と「代理人」の違いは何か。これは申請義務などが誰にあるのかを考えるとわかりやすいだろう。

 例えば、税務手続きの場合、社員は自身で手続きをする。その際、扶養控除等を受けるためには、自身で扶養親族等のマイナンバーを申告する必要がある。このような場合、社員と扶養親族の関係は、「代理人」ではなく「個人番号関係事務実施者」になる。

 これに対し、社員の家族が国民年金第3号被保険者の場合は、本来は社員ではなく、第3号被保険者本人が手続きをすることになっている。しかし実際上は社員が代わりに手続きを行う場合が多い。このとき社員は、自分の手続きのために家族のマイナンバーを取り扱うのではなく、家族の手続きのために家族のマイナンバーを取り扱う。つまり、「個人番号関係事務実施者」ではなく「代理人」になるわけだ。

 やや複雑だが、会社と扶養家族の間に社員が介在する場合に、社員が自分自身の手続きとして行っているのか、家族の手続きを代わりに行っているのか、まず確認しよう。前者の場合には、社員は「代理人」ではなく、社員自身に家族の本人確認を行う義務が生じ、会社には本人確認義務は生じない。これに対し後者の場合は、会社に本人確認義務が生じる。