自社活用で、利点と欠点を知る

 結局、野村証券と共同開発した通信アダプタを任天堂自身が使ったのは、玩具店向けの業務用システムだけだった。

 玩具店から成るスーパーマリオ・クラブを結成し、そのメンバがファミコン・ソフトの評価データベースを検索できるようにした。視聴率調査を実施している調査会社のビデオ・リサーチにソフトが売れそうかどうかの評価を委託し、その評価結果をネットワークを使って提供するものである。

 上村は、「このとき、初めてネットワークは便利なものだと感じた。と同時に弱点もよくわかった」という。不便な点は、たとえばみんなが一斉に見たいときには回線が話中になることである。利用が増えると、設備を増強する必要がある。どの程度の設備を用意しておけばいいのか判断が難しい。

 ネットワークの便利な点は、玩具店は見たいときにいつでもデータを見られる。任天堂は、各店がどういう情報に関心があるかがひと目でわかる。ユーザの反応が直接伝わってくる。ネットワークに強い魅力を感じたという。

 「この通信アダプタの経験が、1995年4月から始めた衛星データ放送に参入するきっかけになった」(上村)。通信アダプタは、ゲームへの展開を断念するなど、必ずしも任天堂の思惑通りにことが進まなかった。衛星データ放送で初めて、ネットワークを使った「遊び」を、スーパーファミコン・ユーザに提供することになった。

出典:日経テクノロジーオンライン 2017年6月2日公開
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