技術にのめり込みすぎた

 こうして1981年に当時の技術をたっぷり盛り込んだ業務用ゲーム機、「レーダースコープ」が完成する(図1)。スペース・フィーパーの開発から付き合いのあった池上通信機と共同で開発した。要求仕様を任天堂が出して、回路設計を池上通信機が担当した。

 他社にない性能を達成すべく、レーダースコープにはECL入出力の高速論理ICやメモリ、多層プリント配線基板などを搭載した。クロック周波数が50MHzだったというのも当時の業務用ゲーム機としては飛び抜けていたという。

 しかし、レーダースコープはヒット商品にはならなかった。価格が約100万円と高価だったことも災いし、多くの在庫を抱える事態に直面した。

 技術競争に目を奪われていたと上村は当時を振り返る。「リアルなシューティング・ゲームが受けると考えていた。ハードウエア重視に偏りすぎていたかもしれない」(上村)。

図1 1980年代初めの高速ICをふんだんに盛り込む
1981年に任天堂が池上通信機と共同開発した業務用ゲーム機「レーダースコープ」の画面写真。ECL入出力の論理ICやメモリなどを使った技術重視の製品だった。
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社内公募のゲームが救う

 上村は、社長の山内溥から「もう池上通信機には行くな」と釘を刺されてしまう。上村は事実上の失業状態に陥ってしまう。善後策として、残ったメンバでレーダースコープの基板を改造して新しいゲーム機に仕立てることになった。

 社内公募で全社的にゲームのアイデアを募った。四つの案が集まり、その一つを実現することになった。それが初めて「マリオ」というキャラクタが登場した「ドンキーコング」である(図2)。

図2 ドンキーコングでよみがえる
不発に終わったレーダースコープのハードウエアを有効利用するために開発した「ドンキーコング」の画面写真。任天堂の看板キャラクタである「マリオ」のデビュー作である。
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