ベテランの暗黙知を伝える

 「上司の背中を見て学べ」。長時間労働や人手不足の問題が深刻になるなか、こうした旧来のやり方では次世代を担う若手が育たない。若手を孤立させず、チームプレーで盛り立てる仕組みは建設コンサルタント会社も導入している。

 パシフィックコンサルタンツは、若手のキャリアデザインに力を入れる。新入社員はまず、「専門性を極める」、「社会に貢献する」、「プライベートを充実させる」といった働くうえで大切にしたいことをシートにまとめ、上司と共有。次に、これらを実現するために1、3、10年後までに何をしなければならないか定め、コーチと呼ぶ30歳代半ばの先輩社員と面談して達成度を確かめる(図2)。

図2 ■ 600人で回すコーチング制度
コーチなどの年齢は大まかな目安。パシフィックコンサルタンツの資料を基に日経コンストラクションが作成
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 対象となるのは大学の学部卒5年目と院卒3年目までの若手。コーチやトレーナーを含めると全社で600人近くが関わる大きな制度だが、「若手の目標設定やモチベーション向上に役立っている」と同社の飯島玲子D&I推進室長は見る。

 仕事の段取りや課題解決の方法を共有できないか──。八千代エンジニヤリングでは、若手からこうした声が上がった。いずれもマニュアル化しづらい暗黙知だ。同社は季刊の社内報を通して、先輩から若手へノウハウを伝えている(写真2)。

写真2■ 八千代エンジニヤリングが昨年から始めた季刊の社内報。ベテラン社員や経営者が登場し、自身の体験談などを若手に伝える(写真:日経コンストラクション)
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[子育て支援] 社員向け保育所の共同設置を目指す

 1社単独では難しかった取り組みを、同業他社と連携して実現しようという動きもある。その1つが社員向け保育所の共同設置だ。

 東京都中央区にある長大の本社に今年4月、建設技術研究所、八千代エンジニヤリング、ニュージェック、復建エンジニヤリングの総務担当者が顔をそろえた。都内のオフィスが近いこれら建設コンサルタント5社で、保育所を共同で設置できないかどうか検討している。各社からアクセスが良い両国駅周辺を候補に、2018年4月の開所を目指す(図3)。

図3 ■ 建設コンサルタント5社の位置関係
(地図データ:Googleマップ)
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 発起人は長大の永冶泰司社長だ。同社の女性技術者の平均在職期間は4年強。保育所不足が著しい都内において、育児を理由に若手が会社を辞めてしまうことがないようにする。

 1社が単独で保育所を設けると、運営が不安定になってしまう。毎年の利用者が数人と少ないうえ、年によって人数が変動するからだ。複数の会社が共同で設置することで、安定して運営できる体制を整える。

 共同保育所の定員は10~20人、1カ月当たりの利用料金は5万円程度を想定している。計1530万~2160万円の開設準備費と計1140万~2200万円の年間運営費を各社が分割して負担する。

 会社のそばに保育所ができたとしても、親子が毎日、満員電車に乗って通うのは現実的ではない。「フレックスタイムや時差出勤、時短勤務などの制度を併せて導入していきたい」と、長大秘書室の早川裕史室長は話す。

出典:日経コンストラクション 2017年7月20日公開 特集 若手を潰すな!
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。