2016年の米国大統領選挙は、資本主義経済をリードしてきた超大国の内側で経済格差と社会の分断がとんでもなく進んでいることを見せつけました。格差問題はいまや世界的な課題です。「格差」というと一般的には職業・職種による違いをイメージしがちですが、同じ職種内でも経済的格差は厳然と存在します。特に建築士の世界は、事務所の立地や規模、業務の内容などによってその差が激しいとかねてから言われてきました。

 2008年1月から2月にかけて、日経アーキテクチュアは一級建築士の資格を持つ読者から無作為抽出した1462人を対象に、収入や労働時間、副業の有無ややりがい意識についてアンケート調査を実施し、その結果を4月14日号で特集にまとめました。

 記事のタイトルは、「格差」建築界

 回答者467人の平均年収は683万円、平均週労働時間は58.5時間でしたが、それはあくまで平均値。年収は1500万円以上から100万円台まで、週労働時間は100時間超から20時間以下まで、大きくばらついていました。

回答者の年収は1500万円以上から100万円台まで、週労働時間は100時間超から20時間以下までばらついた(資料:日経アーキテクチュア)
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 編集チームは回答分布を以下のような刺激的な名称の4つのカテゴリーに分類しました。

  • 労働時間も年収も平均を上回る「働きマン建築士」
  • 労働時間は平均以下なのに年収は平均を上回る「ワークライフバランス建築士」
  • 労働時間は平均以上なのに年収は平均を下回る「ワーキングプア建築士」
  • 労働時間も年収も平均を下回る「フリーター建築士」

 余裕のある「ワークライフバランス建築士」は少数派で、回答者の大半が「ワーキングプア建築士」か「フリーター建築士」のカテゴリーに分類されていました。

 この分類とは別に、アンケートでほかの建築士に比べて自らを「上」「中の上」だと回答した「上流建築士」の平均年収は933万円、平均週労働時間は58.9時間でした。また、自分を「中の中」だと回答した「中流建築士」は650万円で57.5時間、「中の下」「下」だと回答した「下流建築士」は509万円で59.9時間でした。

 上中下の間では収入でくっきり差が付いている一方、労働時間にはほとんど差はありません。ただし、1カ月に換算するとほぼ残業80時間となります。電通の長時間残業が世間を騒がせている現在から見ると、もしこの状況が今も継続していれば、かなり“過酷”な労働環境です。

 仕事に対するやりがいも「下流建築士」だけは低くなっていました。長時間労働が常態化しているにもかかわらず変わらない年収。「上流」と「下流」へ意識が分断されていく建築界の実態をつまびらかにしたこの特集は当時、大きな反響を呼びました。

■読者が“選んだ記事”ベストテン<2008年>

  1.  特集●建築界2008 改正士法に備える(9月8日号)
  2.  特集●早わかり改正建築士法(11月24日号)
  3.  特集●労働実態調査 「格差」建築界(4月14日号)
  4.  特集●注意!転ぶデザイン(2月25日号)
  5.  特集●新建築士 元年(1月14日号)
  6.  緊急特派報告●四川大地震(6月9日号)
  7.  特集●改正建基法の呪縛(7月14日号)
  8.  特集●接道から解く住宅プラン(2月11日号)
  9.  住宅特集●不動産のプロが認めた「新価値」賃貸集合住宅(9月22日号)
  10.  ネクストエー●建築と社会をつなぐ15人の提言(5月26日号)

 今回は特別に、この特集の冒頭部分を一般会員向けに無料公開します。

日経アーキテクチュア 2008年4月14日号特集 「格差」建築界●データで見る建築士像特集 上流と下流で2倍の希望格差(資料:日経アーキテクチュア)
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日経アーキテクチュア 2008年4月14日号特集 「格差」建築界●労働実態読者アンケート 広がる差が招く「やる気」の二極化(資料:日経アーキテクチュア)
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