そうして、2005年4月に2社目の会社である大手電機系のソフトウエア会社に入社することができました。自分は携帯電話向けのLSI開発を担当しました。

海外メーカーからセキュリティのノウハウを学ぶ

 その頃はまだ、携帯電話は1人に1台ありませんでした。「これからは携帯電話のビジネスが来る」と言われていました。さらに、組み込みエンジニアも不足していました。ですから、携帯電話の組み込みエンジニアとして働けば将来安泰だと思ったのです。

 この会社でよかったのは、海外の仕事ができたことです。例えば、あるドイツ車のカーナビを作る仕事をしました。また、欧州の大手携帯メーカー向けのLSIを作る仕事もしました。そこで初めてセキュリティのノウハウを得ました。ラッキーだったのは、その大手携帯メーカーは世界中で大量の携帯電話を販売していたため、抱えているセキュリティの悩みがすごく大きかったことです。

 例えば、「携帯電話を輸送している途中に窃盗団に襲われて何千台という端末が強奪され、SIMロックを外してブラックマーケットにばらまかれた」という話を聞いたことがあります。そこで、SIMロックを解除されないようにする実装や、音楽の著作権を保護するデジタル著作権管理(DRM:Digital Rights Management)、ファームウエアを改ざんされないようにするセキュアブートといった技術が使われます。

 安全な端末を作るために、携帯電話メーカーからは厳しい要件が突きつけられていました。それをどうやってLSIに実装していくかに取り組んでいました。これにより「携帯電話のような製品はこうした観点でセキュリティを考えなければならないのか」と学ぶことができました。

 海外でシェアの高いメーカーのセキュリティに関する貴重なノウハウを直接得られたのは大きかったと思います。この体験が、その後の大きな糧になりました。

出典:ITpro 2017年7月19日公開
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