気づいたら、ドキュメントのフォーマット変換が自由にできるようになっていました。あまり需要がある技術ではありませんが、その技術を利用できる仕事を自分で作っています。こういう武器があるから低リスクで本を作れていると思っています。

 これを生かして、他社の書籍の制作を請け負うこともあります。例えば、原書が特殊なフォーマットで書かれている場合などです。こうした場合、DTPソフトで作り直すか、原書のフォーマットを生かして本にするかという選択になります。作り直すと数式のレイアウトが崩れていないかといった点をチェックする必要がありますが、原書のフォーマットを生かせばそうしたチェックを省けます。

実際に本を売るのはそれなりに大変

 今は、本を作る仕事よりも本を売る仕事が忙しい感じです。販売サイトの作成やメンテナンス、カスタマーサポートなどです。例えば、本を送っても宛先不明で戻ってくるとか、本を買いたい人のクレジットカードが通らないとか、実際に本を売るとなると様々なトラブルが発生します。書店から「取り扱いたい」という問い合わせもいくつか受けています。

 販売サイトでは、RailsベースのEコマースプラットフォームである「Shopify」というサービスを利用しています。このため、最近はRubyばかり書いています。販売するPDFにはユーザーの固有IDを埋め込んでいるのですが、その処理を行うサーバーを立ててShopifyと連携させています。サーバーにはRubyのフレームワークである「Sinatra」を利用し、PaaSの「Heroku」で動かしています。

小さいものを組み合わせて形にしていく

 実際にやってみてわかったのは、自分で本を作るのに必要な技術を持っていれば、出版社を作れるということです。技術を持っていないとものすごく大変でリスキーな話に見えると思いますが、自分でやってみた経験があれば、リスクに対する感じ方はずいぶん変わります。

 今では、個人でも「こうなったらいいな」ということをプログラミングによって試せるようになりました。それをテコに、自分が望む方向にビジネスの舵を切ることができます。自分はそれがたまたま出版というビジネスでした。昔だったら、本を自分で作って自分で売るのはとても大変でした。その仕組みを実装しやすくなっていることに気づけたのは大きいと思っています。

 資金調達のやり方もずいぶん変わりました。私は、クラウドファンディングサイト「Makuake」で、Webサイト「Geekなぺーじ」で有名なあきみちさんと一緒に、IPv6の解説書を作る資金を集めるプロジェクト「すごい技術書を一緒に作ろう。あきみち+ラムダノート『プロフェッショナルIPv6』」を公開しています。既に目標金額をクリアしました。

 こんなことは昔は無理でした。会社でやろうとしたら、ちゃんと企画書を作って稟議を通して、とやっていかなければなりません。それがいきなり可能になっているのです。個人で小さいものを作って組み合わせていくことでビジネスを作っていける場面は、きっとどんな業界にもあると思います。自分はこれからもそんなやり方でおもしろい本を作っていきたいと思っています。

出典:ITpro 2017年5月19日公開
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