ただ、ライターをしているうちに「本の編集のほうが向いているんじゃないか」と思い始めたのです。そんなとき、「マスタリングTCP/IP」を出版しているオーム社が編集者を募集しているのを見つけました。そこで履歴書を送ったところ採用が決まりました。入社したのは2001年2月頃です。

編集の現場では手作業が中心

 前の会社でSGMLを意識して数百ページのドキュメントを作っていた頃は、ドキュメントの制作にエンジニアリングの考え方が入っていました。書籍の編集でも、正規表現やXMLのタグなどを駆使して書籍を作っているに違いないと思っていました。

 ところがオーム社に入ってみると、ほとんどの編集者は著者の原稿を手で直して、あとは制作会社に作ってもらっているだけでした。編集に使っているツールも、テキストエディターよりもMicrosoft Wordのほうが多い。「技術書を作っているのに技術に関心がある人が少ない」というのが正直な感想でした。

 ただ幸いなことに、自分が配属された「開発部」という部署には技術に明るい人もいました。開発部といっても、ソフトウエアやシステムを開発するわけではありません。もともとオーム社は大学や学会との関係が深く、従来は大学の教科書や学会関係の書籍の出版が中心でした。開発部は、そうしたものとは違うタイプの書籍を開発するために作られた部署だと聞いています。アプリケーションソフトの使い方の解説書やプログラミングの入門書といった、書店で比較的大量に販売するタイプの書籍です。

 開発部には「マスタリングTCP/IP」を当時作っていた自分の上司もいました。自分はもともと「マスタリングTCP/IPのような本を作りたい」と言って入社したという経緯があり、開発部に配属されることになりました。

Perlでチェックツールを自作

 入ってすぐに「マスタリングTCP/IP SIP編」という書籍の編集を担当しました。書籍の中では、RFCがたくさん参照されています。ただ、原著の段階ではIETFドラフトの状態で参照されているものが、翻訳時にはRFCになっていたりRFCがバージョンアップしたりしていました。このため、チェックが必要なドラフトやRFCが数百もありました。

 当時は、これらをみんな目でチェックしていました。ドラフトやRFCのURLをいちいちWebブラウザーで開いて更新状況を確かめていたのです。