これに対し、エンジニアが顧客と直接話すようにすれば、「技術的に可能かどうか」「どれくらいの工数がかかるか」が感覚的にすぐわかるので、どんどん話を進められます。となると「あそこの会社は話が早そうだからあそこに任せよう」というお客さんが出てくる。大手SIerに頼んでなかなか進まないよりも、話が早くてしっかりしたところに任せた方が進みが早そうとお客さんが思ってくれればうちに仕事が来ます。ビープラウドを作ったときから、顧客は紹介や問い合わせがメインです。営業には行くことはあまりありません。

 そのためには、仕事で信頼されることを一番の価値観にしています。社員には常に「顧客やチームからどうしたら信頼されるかをいつも考えて行動してください」と言っています。顧客に信頼されれば、リピーターになってくれます。以前、一緒に仕事をした人が転職や部署移動をしてそこから仕事が来る場合もあれば、別のお客さんを紹介してくれる場合もあります。

 いいお客さんはいい客さんを紹介してくれます。「あそこの会社はちょっと高いけど信頼できるよ」といった感じです。逆に悪いお客さんは悪いお客さんを連れてきます。「あそこは安かったよ、使い勝手がいいよ」といった紹介の仕方です。

 ビープラウドは、なるべくいいお客さんだけを増やしていくというやり方をしてきました。「どんな仕事でもいい」と間口を広げていると、悪いお客さんをつかんでしまいます。おかしなことになっているプロジェクトも、政治的なことでおかしくなっていたりします。結局はベースに人があります。状況は人が作り出しているからです。

 エンジニアにはなるべくお客さんと直接やり取りしてもらっています。コミュニケーションツールの「Slack」で部屋を作り、その中でエンジニアが直接やり取りしています。5年くらい前は顔を合わせるのが当たり前でしたが、今はSlackに抵抗ない企業が増えてきました。

 会社としての売り上げは年によって上下します。去年は伸びましたが、今年はその前の年くらいです。ここ5年くらいは売り上げや社員数はあまり変わっていません。それは意図的にやっている面もあります。無理して売り上げを取りに行くと会社が壊れてしまうからです。

 受託開発は今くらいの規模でいいと思っています。あとは自社製品の開発を伸ばしていきたい。エンジニアの仕事の幅を広げると、入ってくる人の幅も広がるからです。

対等なパートナーであることが重要

 個人的には、大手企業が変わることで社会がどう変わるかに興味があります。大手企業では多くの人が働いており、大手が変わらないと社会は変わりません。既存の大手企業の中にはつぶれるところが出てくるかもしれませんが、基本的には多くの企業は残っていくでしょう。そこが変わっていかなければなりません。

 大手SIerが大変なのは、大手の取引先が変われないからだと思います。大手企業のSIerに対するスタンスには、パートナーというよりも「これをやれ」という下請けの感覚が残っています。

 昔は「金を出してるんだから仕事するのが当たり前」という時代でしたが、今は人のモチベーションが上がらないと価値が生まれない時代になっています。お金をもらっても、「やりたくないことはやらない」とみんなが考え始めています。せっかくお金を出すのですから、パートナー企業が成果を出したほうがいいはずです。そのためにはSIerとも対等に組むべきだと思います。「互いに協力してやっていこう」というのが人の力を引き出すスタンスです。

 ビープラウドは「言われた通りにやればいいんだよ」という上から来る企業の仕事は断っています。それでは仕事に何の創造性もありません。匠Method(注:前回のインタビューで紹介)を使って、客とエンジニアが一緒に「どういうものを作るか」を最初からモデル化するという取り組みも行っています。それによって「そういうものを作りたいんだったらこういうやり方がありますよ」とエンジニアの方から提案できます。「お客さんを巻き込んで一体になってやっていく」というのがうちのスタンスです。

出典:ITpro 2017年4月13日公開
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