サーバーに搭載するプロセッサの覇権争いが混沌としてきた。王者の米インテルが大きくつまずいた間隙を突き、米AMDが復活し始めた。インテルは次世代製品の開発を「宿敵」とも言える人物に託し、逆襲を期す。

 米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)にとっては久しぶりの「返り咲き」となった。AMDは2018年11月6日(米国時間)に米サンフランシスコで記者発表会を開催し、同社のサーバープロセッサ「EPYC」が米アマゾン・ウェブ・サービス(Amazon Web Services、AWS)に採用されたことを発表したのだ。

AMDのリサ・スー社長兼CEO(左)とAWSのマット・ガルマンバイスプレジデント
出所:米AMD
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 AWSは仮想マシンサービス「Amazon EC2」の汎用インスタンスである「M5」と「T3」、メモリー特化型インスタンスである「R5」にそれぞれEPYC搭載インスタンスを用意する。AWSはEPYC搭載インスタンスの価格を、Xeon搭載インスタンスより10%安価に設定した。

 AMDの発表会に登壇したAWSのマット・ガルマン(Matt Garman)バイスプレジデントは「M5、T3、R5の各インスタンスは、AWSの中で最も人気のあるインスタンスだ」と語る。そのうえでガルマン氏は「顧客がAWSに期待するのは、第1にセキュリティー、第2に選択肢の多さだが、それに次いでコストも非常に重視している」と述べ、主要インスタンスの価格を引き下げられたことが、EPYCを採用した理由だと明かした。

 これがAMDにとっての返り咲きと説明したのは、AWSが過去にもAMD製プロセッサを採用していたからだ。EC2最初期の2006~2007年のことだ。EC2の仮想CPU「ECU」の性能が今でも「2007年版のXeonまたはOpteron相当」と表現されているのはその名残である。OpteronはAMDが販売するサーバープロセッサの当時の製品名だ。その後、AWSはOpteronの採用をやめたが、EPYCで久しぶりの復活を遂げた。

オラクルやマイクロソフトも採用済み

 EPYCの採用はAWSだけではない。米マイクロソフト(Microsoft)は2017年12月に「Microsoft Azure」で、米オラクル(Oracle)は2018年10月に「Oracle Cloud」で、それぞれ採用を発表済み。2018年11月6日のAMDの発表会では、中国の百度(Baidu)やテンセント(Tencent)、米ドロップボックス(Dropbox)などの大手クラウド事業者が採用したことも明らかにされた。

 AMDのフォレスト・ノロド(Forrest Norrod)シニア・バイス・プレジデントは「データセンター向けプロセッサの世界市場では現在、上位7社の需要家が全体の40%以上を調達している」と明かす。大手クラウド事業者に自社の製品を採用されるか否かが、半導体メーカーにとってかつて無いほど重要になっているのだ。

 米経済誌「BARRON'S」の報道によれば、サーバープロセッサ市場におけるAMDのシェアは2017年に1%に満たなかったが、2018年には「一桁台半ば」になりそうなのだという。米調査会社のマーキュリー・リサーチ(Mercury Research)によれば、2006年1~3月期時点でのx86サーバープロセッサ市場におけるAMDのシェアは22.1%に達していた。それに比べるとまだまだ小さいが、2017年6月にEPYCを投入してから1年しかたっていないことを考えると、上々の成果を上げていると言えそうだ。

 AMDがサーバープロセッサで復活したのは、CPUアーキテクチャー「Zen」の成功がある。2016年にまずパソコン用プロセッサで採用したZenは、前世代の「Bulldozer」に比べてIPC(クロック当たりの命令実行数)を52%増加させるなど性能を大幅に強化。Bulldozerを採用したOpteronはXeonに性能で見劣りしたが、Zenを採用したEPYCはXeonと性能で互角の勝負ができるようになった。

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