「Amazon Web Services(AWS)」や「Microsoft Azure」などのクラウドベンダーの顧客獲得の主戦場が、オンプレミス(自社所有)環境にある企業の基幹系システムに移ってきた。クラウドベンダー各社は、大規模システムを稼働できるコンピューティングサービスを追加したり、基幹系システムで頻繁に利用されているソフトウエアをそのまま移行できるサービスを用意したりするなど、基幹系のクラウド移行を念頭に置いたサービス拡充を急いでいる。

 「基幹系のクラウド移行の動きにやっと火がついてきた」。日本マイクロソフトの浅野智 マーケティング&オペレーションズ クラウド&エンタープライズビジネス本部 業務執行役員本部長はこう話す。「Azureの中でも基幹系に利用されるWindows Server関連のサービスを見ると、2018年4月から急速に伸びている」と浅野本部長は話す。ライセンスベースで見た場合、30%以上の伸びになっているという。

 オンプレミス環境で稼働する基幹系システムを多く抱え、クラウドサービス「IBM Cloud」を提供する日本IBMも「オンプレミスとクラウドを使い分けるハイブリッドではなく、基幹系全体をクラウド移行しようという案件が増えてきた」(日本IBMの澤藤佳実 グローバル・テクノロジー・サービス事業インフラストラクチャーサービス事業統括 戦略ビジネス&先進テクノロジー・サービス部長)と手応えをかんじている。澤藤部長によると、「数百の仮想マシンを半年かけてオンプレミス環境からIBM Cloudに移行する、といった大規模プロジェクトもある」という。

SAP ERPの「2025年問題」の前にWindows Serverもサポート切れ

 AI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)といった新しい領域のシステムでクラウドを利用することは当たり前になった。一方で、安定稼働を重視する基幹系システムの領域では、クラウドの採用は遅れがちと見られていた。それが冒頭のようにここに来て、一気に動き出している。

 その背景には、現在のオンプレミス環境で動作している基幹系システムを相次いで襲うサポート切れがある。約5年ごとにやって来るハードウエアのリプレースに加え、基幹系システムを構成する主要なソフトウエアのサポート切れが数年間で相次いでやって来る。

代表的なソフトウエアのサポート切れの例
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 代表的なソフトウエアが、欧州SAPのERP(統合基幹業務システム)パッケージ「SAP ERP」と業務アプリケーション群「SAP Business Suite」(以下、両製品をまとめて「SAP ERP」とする)だ。SAP ERPは標準サポートが2025年に終了する。2025年までにSAP ERPのユーザー企業は、新ERP「S/4HANA」に移行するなど何らかの対処をしなければならない。

 10年以上利用し続けることが一般的な基幹系システムにおいて、7年後という期限は決して遠くはない。SAP ERPのユーザー企業は2000社あると言われている。2000社が今後7年間で基幹系を刷新するというのは、IT人材確保の面でも簡単ではない。これがいわゆるSAPの「2025年問題」だ。

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