3大クラウドが提供する学習済みAIの代表格「顔認識AI」の実力検証を行う。同一人物が顔の角度を変えたり、マスクや眼鏡などを装着したりしたときに、正しく判定できるかどうかを調べた。

 利用したサービスは、Amazon Web Services(AWS)が「Amazon Rekognition」、Microsoft Azureは「Face API」である。GCPの「Google Cloud Vision」は顔を検出するものの個人を特定する機能はないので、本検証の対象から外した。

 検証では、モデルの宮川春花さん1人の画像を使い、正面を向いた基本画像と、比較対象の画像をAWSとAzureの顔認識AIサイトにそれぞれアップロードし判定結果を得た。

 AWSは「類似度(Similarity)」、Azureは「信頼度(Confidence)」として、同一人物である確からしさをパーセンテージ(百分率)で提示する。類似度や信頼度は目や口、鼻など顔のパーツの位置などを基に算出しているとみられるが、算出のロジックは公開していない。

 AWS、Azureとも、同一人物か別人かという判定もする。判定基準が分かりやすいのはAzureのほうで、信頼度50%以上であれば同一人物という判定を提示する。なお信頼度50%以上という判定基準はVerifyモードのデフォルトであり、モードによって基準値が異なり、ユーザーが指定することも可能だ。AWSは類似度を基に判定していると推察されるが、判定基準を公開していない。また、AWSは別人と判定した場合、顔認識AIのサイト上では類似度の数値を表示しない。

■変更履歴
補足として、5段落目に「なお信頼度50%以上という判定基準はVerifyモードのデフォルトであり、モードによって基準値が異なり、ユーザーが指定することも可能だ。」という文を追記しました。 [2018/6/27 00:00]

AWSは「左向き」でも同一人物と正しく判定

 検証結果を順番に見よう。

 AWSもAzureも「下向き」「上向き」の顔画像に対して、「同一人物」という判定を下した。AWSの類似度は下向き、上向きとも99%。Azureの信頼度は下向きが87%、上向きが80%だった。

 Azureのほうが確からしさ(信頼度)の数値が低いが、同一人物であることにAIが自信を持てなかったというわけではない。AzureのAIサービスを使ったシステム開発に携わる、FIXER 研究開発部 データサイエンティストの山本和貴氏は「Face APIを使ってきた経験からすると、信頼度の数値はやや低めに出る。同一人物である確実性が高いとみなせる目安は70%だ」と話す。そのためAWS、Azureともに、同一人物だと正しく判定し、類似度や信頼度の数値も適正だったといえる。

AWS「下向き」→同一人物(99%)
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AWS「上向き」→同一人物(99%)
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Azure「下向き」→同一人物(87%)
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Azure「上向き」→同一人物(80%)
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 横向きの顔に対しては、AWSとAzureで差が出た。「右向き」の顔画像に対して、AWSは別人という誤った判定。Azureは「顔を検出できない」という結果だった。Azureでは顔を認識した際に、ピンク色の四角形で枠どりが出るが、右向きの顔ではこれが表示されない。

AWS「右向き」→別人
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AWS「左向き」→同一人物(88%)
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Azure「右向き」→顔の検出不可
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Azure「左向き」→顔の検出不可
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 「左向き」の顔画像でも、Azureは「顔を検出できない」という結果である。一方、AWSは88%の類似度で同一人物と正しく判定した。

 AWSが左向きだけ同一人物とした理由について、AWSのAIサービスやセキュリティに詳しい、NRIセキュアテクノロジーズ ソリューション事業本部 ソリューションビジネス四部 主任セキュリティエンジニアの吉江瞬氏は、正面を向いた基本画像に写った耳に注目する。「左耳は隠れているが、右耳は少し見えている。左向きの顔画像では耳の形などを比べて、同一人物と判定した可能性がある」(吉江氏)。

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