仮想通貨業界で世界的な地殻変動が起きている。かつて仮想通貨取引やマイニングの総本山だった中国は規制を強化。その後、ビットコイン取引額で世界一となった日本も、取引所での巨額流出事件をきっかけに振興モードは沈静化しつつある。そうした中、新たに台頭し始めた国がある。中国と国境を接するモンゴルだ。

 「モンゴルは仮想通貨マイニングのパラダイスだ」――。同国の大手IT企業であるICT GROUPのルハムスレン・ガンボルドCEO(最高経営責任者)は、こう語る。仮想通貨マイニングの首都として確固たるポジションにあった中国が規制強化に揺れる中、遷都先の有力候補として急浮上してきたのがモンゴルだ。

 モンゴル国内ではマシンを稼働させるマイニングファームの建設が相次ぎ、海外の需要も取り込み始めている。人口300万人、GDP(国内総生産)は約110億ドルに過ぎない同国が、ポスト中国と目されるのは偶然ではない。背景には、3つの確かな理由が存在する。

モンゴルが中国のマイニング事業者を引きつける3つの理由
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当局は推進も規制もせず、静観の構え

 2017年10月、モンゴルの金融当局は仮想通貨に関して注意を促す告示を出した。日本の金融庁に当たる金融調整委員会に対して、消費者から「One Coin」と呼ぶ仮想通貨への苦情が寄せられたことが発端だ。調査に乗り出した同委員会は、One Coinは詐欺的要素が強いと判断。最終的には、ビットコインやイーサリアムといった著名な仮想通貨も含め、「仮想通貨は投資対象としてリスクが高い」というメッセージを発した。

 モンゴルでは金融調整委員会と並び、中央銀行に当たるモンゴル銀行も仮想通貨領域を注視している。個人の立場として本誌取材に応じたモンゴル銀行のバトジン・ナツァグドルジ シニアエコノミストは、「マイニングへの投資にも注意を要する。仮にマシンの輸入に2カ月かかるとすれば、既に海外では次世代モデルが登場していて、マイニング競争で不利に立たされる可能性があるからだ」と語る。

 モンゴル政府が、投資家保護の観点から仮想通貨に警戒感を持っているのは確かだ。ただし今のところ規制は存在せず、規制導入に向けた具体的な動きも見受けられない。2017年7月に電子マネーに関する規制を発出したものの、その定義に仮想通貨は含めなかった。政府に近しいある人物は、「モンゴルでは、仮想通貨に関する情報がまだ不足している。推進も規制もしていないのが現状」と話す。今のところ静観の構えというわけだ。

 一方で、民間企業は法規制について楽観視しているようだ。ICT GROUPの子会社であるitoolsのバトタミル・アディルビシ チェアマンは、「国内のテクノロジー企業は、仮想通貨やブロックチェーンのメリットを政府に対して十分に説明している。もし法規制ができるにしても、推進の色合いが濃い内容になると期待している」と、見立てを語る。

 

 こうした規制環境は、国外のマイニング事業者たちにとっては魅力的だ。テクノロジー企業として法人登記してマシンを輸入してくれば、「脱税などの違法行為がない限りは問題ないはずだ」と、バトジン シニアエコノミストは語り、「(モンゴル国内の)仮想通貨取引所に今のところ中国の影は見られない。ただし、マイニング領域では相当数の事業者が入ってきているとみている」と明かす。

ビットコインのマイニングプールのシェア
出所:BLOCKCHAIN
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