この連載も7回目となり、1年の連載の折り返し地点を迎えました。今回からはチェンジマネジメントのより具体的なメソドロジーと、チェンジモンスターと戦うチェンジリーダーに降りかかる多大なストレスを解消するための(私自身の経験に基づいた)心の持ち方という二つの観点で話をしていきます。今回はチェンジマネジメントに欠かせない「投資の継続」に関わるメソドロジーを中心に解説します。

入社初日に示された目標と、そこで抱いた違和感

 少し古い話になりますが、2010年に私がアドビにコンサルタントとして入社したときに抱いた「違和感」から話を始めます。

 私は音楽大学の出身で、その前は事業会社(DeNA)でマーケティング業務とプロダクト開発に携わっていました。B2Bビジネスを手掛けたことがない、外資系企業の経験もない、テクノロジーも知らない、ましてやコンサルティングの経験もないという、“ナイナイづくし”どころか“ナイナイナイナイ”の人材でした。

 当時の私を採用したマネジャーはどういう考えだったのか、今になって話を聞きたいと思うくらいです。ただし前職では、事業を立ち上げ、事業を成長させ、事業をスケールさせるための投資を引き出す、という三つの貴重な経験を積む機会に恵まれていました。

 そんな私がアドビに入社した初日に、「あなたの目標はユーティライゼーション(Utilization、コンサルタントとしての稼働率)を60%達成することだから」と上司に告げられました。1週間の勤務時間を40時間として、その60%つまり24時間をクライアントのために働くことが目標という意味です。

 本当にそれでよいのでしょうか?大きな違和感を抱きました。

 前職で私はプロダクトのオーナーとして損益計算を任され、売り上げからコスト、粗利などの数字目標を達成し続けること=お金を稼ぎ、利益を出し、株主に還元することが、プロとしての責任であるという認識を持っていました。マーケティング業務を担っていたときは予算を投資として考え、投資へのリターンを厳しく追及されていました。

 そして、「売り上げを伸ばし、マネジメントの立場でコスト管理して利益を出すこと、その利益を投資に回してビジネスをスケールさせていくことが、プロとしての仕事の定量的観点である」と入社時からずっと思い続けていました。それ以上に「お客様の声をきちんと聞くこと、聞いたからには応えることこそが、プロとしての仕事の定性的観点だ」と思っていました。

 要するに、ビジネスをスケールすることとお客様の声に応えることは相関しており、どちらか一方ではなくどちらも優先すべきという認識でした。しかし当時のアドビでは、コンサルタントの私にユーティライゼーションを示しただけでした。

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