「良いモノをより安く」製造するだけでは、メーカーは生き残れない。今、求められているのはイノベーションだ。ただし、技術を革新するだけではイノベーションは起こせない。大切なのは、「技術の進化」と「価値の進化」を両立させて、新たな価値を創造することだ。価値創造には、技術だけではなくビジネスやサービスの視点も必要になる。イノベーションを起こすために不可欠な要素を解説する。

連載開始に当たって

 1933年創業の立石電機製作所を前身とするオムロンはこれまで、さまざまな「日本初」や「世界初」を生み出してきた。その根幹にはいつも「ソーシャルニーズの創造」、言い換えると「モノづくりで社会課題を解決する」という思いがあった。

 例えば1964年に開発した「全自動感応式電子信号機」は、単なる信号機ではない。多くのセンサーを組み込み、交通量に応じて信号を制御し、交通渋滞の緩和を目指した。

 1967年の「無人駅システム」は、慢性的な通勤ラッシュで激務が続いていた駅員の負担軽減が目的だった。2016年の「連続血圧測定技術」には、連続した血圧測定によって高血圧に起因する脳・心血管疾患の患者を少しでも減らしたいという思いがあった。

 オムロンがやってきたことは、どれもイノベーションだったといえる。メーカーなので「モノづくり」、要するにハードウエアで社会課題を解決してきたのだが、その取り組みはどれも新しい価値の創造へとつながっていた。イノベーションについて考えるとき、この「価値創造」が非常に重要になる。オムロン創業者の立石一真氏は、「新しい価値を生む仕組みは全てイノベーション」という言葉を残しているほどだ。

 今回の連載のテーマは、「製造業がイノベーションをデザインするための視点」とする。その話を「イノベーションの前に伝えたい5つのこと」、「イノベーションを生み出す世界観をデザインする」、「イノベーションを仕掛ける人財の育成」の大きく3つに分けて考えていく。

 第1回目の本稿では、「イノベーションの前に伝えたい5つのこと」のうち、主に「価値創造」の大切さ、製造業がイノベーションを考えるときに不可欠なキーワードとなる「価値の創造」について説明する。

企業は社会的な使命を実践するために利益を必要とする

 まず「価値創造」について。製造業は、品質やコスト、納期のいわゆる「QCD(Quality・Cost・Delivery)」について考えることはあっても、普段の仕事の中で価値創造について深く真剣に考える機会はそれほど多くはないだろう。

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