「B2Bマーケティングを全社員700人のDNAに組み込むんだ」――。

 この言葉をアルテリア・ネットワークスのCEO(最高経営責任者)の川上潤の口から聞いたとき、その重大さや広がり、凄み、そして自社にとどまらず通信業界にとっての重要な転機になることを、当時の私にはピンと来ていなかったことを正直にお話ししなければなりません。

 これまで私は経営コンサルティングの後、外資IT企業で企画・マーケティング畑を歩み、経営企画に従事する過程で、数多くの変革プロジェクトやリサーチのプロジェクトを経験してきました。しかし、法人向け通信サービスを提供するB2B企業のアルテリアがこの発想を取り入れるという事の重大さには、気づいていなかったのでしょう。

グローバルリーダー経験者が持つチカラを実感

 それは2017年9月のある日、アルテリアのCEOに川上が就任してから2カ月後のことでした。GEヘルスケア・ジャパンでマーケティング導入をリードした川上と、同じく元米GEヘルスケア・ライフサイエンス チーフデジタルマーケティングでグローバルリーダーを務めた飯室淳史さん、そして私の3人による、マーケティングをどのように組織に浸透させるかを議論した静かなキックオフの場で、このコンセプトが生まれました。

 場所はアルテリアの9階役員会議室。飯室氏がTシャツにジャケットを羽織っていたことが昨日のことのようです。その日の議論にPMO(プロジェクトマネジメントオフィス、本プロジェクトの事務局)として参加した私のノートにはこう書いてあります。

「アルテリア・ネットワークスがマーケティングの会社になれれば、イノベーション企業になることにつながるのではないか」
「プロダクトアウトではもはやうまくいかない」
「マーケティングで経営を変えよう」
「マーケティングは経営そのもの」
「どのように進めていくのがよいのか。やはり経営陣から変わっていかなければ会社は変えられない」

 直後のページには、私が書いたプロジェクトの大枠のタイムラインがあり、目的欄には「マーケティングオリエンテッドな組織になるために」とあります。この日から1年後の今日までプロジェクトの方針にはまったくぶれがありません。

 マーケティングをどのように組織に組み込めばいいのか。そのころは、挑戦と失敗を繰り返す過程で、自分の中にようやく大まかなイメージが出来上がりつつあるところでした。そして冒頭の川上の発言を聞いたときに、グローバルリーダー経験者が持つチカラを改めて感じました。

 物事の始まりというのは実は随分と静かなもので、数年たって全てが明らかになった後に「あれが始まりだった」と気付くものなのかもしれません。おそらく「その日」が始まりだったのでしょう。

 それが今日では、アルテリアのグループ850人(グループ会社などを含む、アルテリアの2018年8月現在の社員数)全員にマーケティング哲学を浸透させるべく、マネージャー陣が先頭に立って自らの言葉で語り始めるところに来ています。

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