普及期に突入したRPA(ロボティックプロセスオートメーション)だが、ロボット作成に手間がかかるなど苦労は少なくない。典型的なRPAの失敗パターンや原因、対策について解説する。

 PC上で人間が行っていた作業を自動化する「RPA」の普及が進んでいる。RPAの導入支援を手掛けるアビームコンサルティングの金弘潤一郎戦略ビジネスユニットディレクターは「2017年までは検証に関する相談が多かったが、今は本格導入や社内展開に関する相談が多くなっている」と話す。

 ただ、本格導入にはさまざまな落とし穴が待ち構えている。普及が始まったばかりで、導入・運用のノウハウが十分に確立されていないからだ。ディップの進藤圭次世代事業準備室室長は「手探りで導入を進めたところ、いろいろな失敗を経験した」と明かす。同社はRPAを導入して、広告制作や人事などの業務で定型作業の自動化を進めている。

 進藤室長はRPAツールの導入に一度失敗している。RPAツールとは、人間の代わりに作業をするソフトウエアである「ロボット」を作成するツールだ。GUI画面上の設定でロボットを作成する。

 検討を開始した当初、進藤室長が中心になってRPAツールを評価して、複雑な処理も自動化できる機能が充実したある製品を選定した。ところが利用部門からのクレームでこれが覆った。「ロボットの作成を利用部門に任せる計画だったが、利用部門から『難しすぎて作れない』と指摘された」(進藤室長)からだ。RPAツールの評価からやり直す羽目になった。

RPAに潜む5つの落とし穴

 この特集では、典型的な5つの落とし穴を取り上げる。導入時に直面するのは「ロボットの作成に時間がかかる」と「利用部門がロボットを作れない」の2つ、運用時に問題が判明するのは「ロボットが間違いを犯す」「ロボットが止まる」「メンテナンスできない」の3つだ。今回は導入時に直面する2つの落とし穴について、典型例と回避策、対応策を説明しよう。まずはこれを乗り越えないと、ロボットの導入すらままならない。

RPAの5つの落とし穴
今回は導入時に直面する落とし穴1と2を解説する
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落とし穴1
ロボットの作成に時間がかかる

 この落とし穴の典型的なシーンは次のようなものだ。

 システム部門による検証では、自部門の経理業務を自動化するロボットを1週間程度で作成できた。問題なく全社展開できると判断して本格導入を始めた。ところが、ふたを開けてみるとロボットの稼働まで何度も作り直しが必要になった。1つのロボットの作成に1カ月以上かかり、3カ月たっても稼働しているロボットはいまだ1桁だ。

 ロボットの作成に予想外の時間がかかる原因としては(1)作業内容を洗い出しきれていない、(2)ツールが苦手な操作をしている、(3)ロボットの作成作業が非効率の3つがよくあるパターンだ。

 作業内容を洗い出しきれていないと、ロボットを何度も作成し直す羽目になる。日立ソリューションズで社内へのRPA導入を主導した井手悦雄IT・情報セキュリティ本部経営基盤システム部主任技師は「導入初期、業務の概念図とヒアリングだけでロボットを作成したところ、作業内容の見逃しがあった」という。その結果、ロボットをリリースしては、見逃しを指摘されて作り直すというのを繰り返すことになった。

 RPAツールに苦手な操作をさせようとするのも、ロボット作成を長期化させる要因になる。ツールによって異なるが、複雑な例外処理、Excelシートの細かい編集、専用クライアントソフトがあるシステムの操作、動的で複雑なUIは苦手とするケースが多い。

RPAツールが苦手とする操作
苦手領域はツールによって異なる
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 例えば、Excelシートに貼り付けた文字数に応じて列幅を調整したりするのは、RPAの得意な作業ではない。古い基幹系システムのクライアントソフトの操作も苦手とするツールがある。できないというわけではないが、設定に手間がかかる。

 非効率な作成作業の典型例が、ロボットを作るたびにゼロから設定しているといったもの。複数のロボットで共通する同じ作業を、複数の作成者が別々に作成している。

洗い出しは利用部門に任せる

 それぞれの原因に対して、次のような対策を打つと問題を回避したり対処したりできる。

 作業内容を洗い出しきれていない問題への対策としては「利用部門の担当者に業務を整理してもらうといい」(日立ソリューションズの井手主任技師)。具体的には、Excelなどに画面キャプチャーを貼り付けながら操作内容を整理してもらう。

 ツールが苦手とする操作をしている問題への対策としては、作業の洗い出しの結果、苦手とする作業があれば作成時間の見積もりを長めに取る。あまりに作成時間が長くなるようであれば、その箇所の自動化は実施しないと割り切る。

 非効率な作成作業への対策としては、同じ操作を共通部品にするという方法がある。住友林業情報システムの成田裕一ICTビジネスサービス部シニアマネージャーは「操作するシステムの画面ごとに共通部品を作成した。共通部品を組み合わせて入力項目などのパラメーターを設定すれば、一連の作業を自動化できるようにした」という。

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