スマートフォン(スマホ)やタブレット、ノートパソコンなど、気軽に持ち歩ける端末が増え、無線LANのニーズは高まる一方だ。自宅やオフィスだけでなく、外出先のカフェや繁華街などで、無線LANを利用している人は多いだろう。

約20年で速度は5000倍に

 無線LANの最初の規格IEEE 802.11が策定されたのは1997年のこと(図1-1)。それから20年ほどで、無線LANは劇的に速くなった。

図1-1●無線LAN発展の歴史
1999年に登場したIEEE 802.11bから本格的な普及が始まり、高速化を目指して新しい標準規格が作られた。
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 IEEE 802.11の最大伝送速度はわずか2Mビット/秒だった。1999年の802.11bでは11Mビット/秒になった。同年に策定された802.11aや2003年に策定された802.11gでは54Mビット/秒、2009年の802.11nでは600Mビット/秒へと高速化が進んだ。そして、2013年に登場した802.11acでは6.9Gビット/秒と、ついにギガの時代に突入した。

 高速化の流れは今後も止まらない。2020年に標準化が完了する予定の次世代規格IEEE 802.11axは9.6Gビット/秒と、11acの1.4倍になる。最初の規格と比べると約5000倍に達する。

免許不要の電波を活用

 無線LANでは、最初の規格以降2.4GHz帯と5GHz帯という同じ周波数帯を使い続けている。いずれも日本国内では免許不要で誰でも利用できる(表1-1)。

表1-1●無線LANで使う周波数帯の特徴
日本では2.4GHz帯と5GHz帯が使われている。
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 比較的遠くまで届き障害物があっても回り込みやすいために使いやすいのが2.4GHz帯だ。無線LANが登場した当初は、この2.4GHz帯が主に使われてきた。

 だが、2.4GHz帯は無線通信以外でも利用できるISM帯に当たり、電子レンジやBluetoothなどと干渉することが増えてきた。このため、比較的空いていて帯域を確保しやすい5GHz帯を使うように徐々にシフト。11nでは2.4GHzとどちらも使えるようになった。そして、現在の11acでは5GHzだけを利用する。だが次の11axでは、5GHz帯だけにするのではなく、IoT分野の活用を想定して電波の飛びやすい2.4GHz帯も改めてサポートする。

今後は多様な方向へ進化

 無線LANは今後、「より速く」「より安全に」「より使いやすく」と多様な方向を目指して進化していく(図1-2)。

図1-2●無線LANの進化の方向性
現状指摘されている課題の解決策。「より速く」「より安全に」「より使いやすく」を目指し、様々な技術が開発されている。
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 「より速く」を目指した次世代無線LANとして、IEEEで標準化が進んでいるのが前述のIEEE 802.11axだ。すでに委員会でドラフトが承認され、技術的な仕様がほぼ固まっている。

 11axで予定されている強化は最大伝送速度の向上だけではない。大人数で快適に利用するためのスループットの向上と、IoT分野での利用を想定した多端末への対応も盛り込まれている。こうした11axの強化点をPart2で解説する。

 「より安全に」を目指して、2018年6月に登場したのが「WPA3」だ。これは業界団体のWi-Fiアライアンスが制定しているセキュリティ規格の最新版。前回のWPA2が登場したのは2004年であり、実に14年ぶりとなるWPAの新規格だ。このWPA3では、セキュリティの強化以外に、スマホとQRコードで初期設定ができるなど、現在の環境に合わせた使い勝手の向上も図っている。このWPA3についてはPart3で紹介しよう。

 3番目の「より使いやすく」を目指しているのがメッシュネットワークだ。複数の無線LANアクセスポイント間でメッシュ型のリンクを自動的に張り、最適な経路でデータをやり取りする。電源さえあれば、LANケーブルを配線せずに、無線LANの通信エリアを簡単に拡張できる技術として注目されている。Part4で、このメッシュネットワークを取り上げる。

▼IEEE
The Institute of Electrical and Electronics Engineersの略。日本語では米国電気電子技術者協会。
▼2.4GHz帯と5GHz帯
米国などでは6GHz帯や7GHz帯という新しい周波数帯も利用あるいは利用が検討されている。
▼ISM
Industry Science Medicalの略。産業・科学・医療分野での用途に、ITU(International Telecommunication Union)が国際的に割り当てた周波数帯域。
▼IoT
Internet of Thingsの略。
▼WPA
Wi-Fi Protected Accessの略。