ビジネスのデジタル化を進めると、必ずと言っていいほど厄介な存在が出てくる。筆者が国内の著名企業20社の経営層や企画部門、事業部門にインタビューした結果、デジタル化を阻む5つの厄介な存在が浮かび上がった。今回はこのうち「アウトソーシング癖」を取り上げる。

 今でこそ内製化が進んできたが、日本では情報システムの開発や運用をITベンダーにアウトソーシングする企業がまだ多い。大手も例外ではない。もちろんアウトソーシングのメリットはあるが、何もかも外部委託してしまうようになるのは問題だ。中には社内で使う企画書の作成までITベンダーに依頼しているケースも。これでは、自社が主体となってデジタル化を推進するのは難しい。小売業H社の例を見てみよう。

 H社には約20人の部員が在籍するIT部門があった。しかし、戦略の立案から開発、運用に至るまで、あらゆるIT関連業務をITベンダーにアウトソーシングしていた。自社のシステムの状況さえきちんと把握できていない。当然、IT部員から新しいIT活用のアイデアが出ることはなかった。主な仕事といえば、ベンダーが作った企画書での社内プレゼンや、店舗からの問い合わせ対応などだった。

 いわゆる丸投げ体質だ。H社はそのITベンダーから逃れられず、「ベンダーロックイン」の状態に陥っていた。代償は大きく、ITコストは高止まり。割高な費用の値下げ交渉に、IT部門は追われていた。

 この状況はI役員がIT部門の担当に就任するまで続いた。I役員とは、営業現場やブランド戦略を手掛けてきた人物だ。社内の事業変革を担うリーダーの1人である。

 I役員は就任時の様子を次のように語る。「IT部門にはビジョンやミッションがなかった。全てをITベンダーに握られており、我々はITベンダーの言いなりになるしかなかった」。ITベンダーに唯一要求していたのは、「同じ品質でコストを下げて」だった。

 これではとてもデジタル化を推進できない。I役員の報告で事態の重大さに気付いたH社は、I役員を中心にIT部門の改革とビジネスのデジタル化を同時に進めることにした。

「デジタルマッスル」を鍛える

 H社の事例は他人事ではない。この例でアウトソーシング癖がついていたのはIT部門だったが、デジタル推進組織でも同じ状況が起こり得る。知らず知らずにアウトソーシングが癖になり、外部への依存度が高くなる。その一方で、自分たちの頭で考えることができなくなる。アウトソーシング癖はデジタル化を阻む大きな存在だと言っていい。

 ビジネスのデジタル化では、自分の頭で考えて企画し、実行に移し、素早く仮説検証を繰り返すことが重要だ。つまり「企画力」と「実行力」がデジタル化を加速させる両輪となる。デジタル化に必要な筋肉という意味で「デジタルマッスル」と呼んでもいい。

この先は日経 xTECH Active会員の登録が必要です

日経xTECH Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。