ビジネスのデジタル化を進めると、必ずと言っていいほど厄介な存在が出てくる。筆者が国内の著名企業20社の経営層や企画部門、事業部門にインタビューした結果、デジタル化を阻む5つの厄介な存在が浮かび上がった。今回は「機能しないデジタル推進組織」である。

 デジタル化を推進するために、専門の「デジタル推進組織」を設置する企業は少なくない。しかし専門組織を作っても、デジタル化が加速しない例は目立つ。筆者が著名企業20社にインタビューしたところ、デジタル推進組織が機能せず、プロジェクトが思うように進まないケースがいくつもあった。

 言うまでもなくデジタル化を進めるには、デジタル推進組織と事業部門である現場が協力して事業変革を進める必要がある。にもかかわらず、両者がいがみ合い、足を引っ張り合う。大事なのは現場が主体的に動き、それをデジタル推進組織がサポートする体制だ。それを実現できなければ、全社を上げたデジタル化はなかなか成功しない。

全社横断のデジタル推進組織が現場を無視

 製造業F社のビジネスは、大きく4つの事業から成り立っていた。事業部門にはそれぞれ研究・開発・調達・製造・企画・販売の機能があった。事業部門が独立して動くことが企業文化になっており、他の事業部門との交流もほとんどなかった。業務システムやグループウエアが別々に導入されていたほどである。

 そんなF社が全社を上げてデジタル化に取り込み始めた。当初は事業部門単位で人工知能やIoT(インターネット・オブ・シングズ)を使った製品開発を開始した。これらの取り組みとは別に、全社横断型のデジタル推進組織を設置することになった。新設したデジタル推進組織のミッションは二つあった。一つは各事業部門が独自に進めているデジタル化を全社的な観点からサポートすること。もう一つは既存事業にとらわれない発想で新しいビジネスを作り出すことだ。

 ところが、デジタル推進組織は当初の目論見通りには機能しなかった。独自のデジタル事業の開発ばかりを進め、事業部門の取り組みに協力する人員を割り当てなかったのである。理由は単純。自分たちの実績作りを優先したためだ。事業部門のサポートをしなかったため、デジタル推進組織と現場の距離は広がる一方だった。 

 インタビューに応じてくれた事業部門の企画担当G氏は「デジタル推進組織は独自プロジェクトばかり進めるのではなく、各事業部門の取り組みを横串でサポートしてほしかった。現場には最新技術の知見が少ないので思うようにプロジェクトが進まない」と悔しがる。G氏はこうした悩みをデジタル推進組織に何度も訴えたが、聞く耳を持ってもらえなかったという。

 その結果、デジタル推進組織のサポートを得られなかったG氏のデジタル化プロジェクトは停滞。何とか自力で新サービスを立ち上げたが、それは競合企業が同様のサービスを提供した2年後だった。

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