ビジネスのデジタル化を進めると、必ずと言っていいほど厄介な存在が出てくる。筆者が国内の著名企業20社の経営層や企画部門、事業部門にインタビューした結果、大きく5つの厄介な存在が浮かび上がった。今回取り上げる厄介な存在は「日本特有の人事制度」である。

 日本の大企業、特に製造業に多く導入されている人事制度に「職能資格制度」がある。職務を遂行する能力によって従業員をレベル分けし、その等級に応じて給与などを決定する制度だ。等級が職種横断的に設定されているので、長期的にゼネラリストを育成しやすいメリットがある。しかし、職務内容によって処遇に差をつけにくい。このことが、デジタル人材を獲得する上で障壁になっている。日本を代表する製造業E社の例を見てみよう。

 製造業E社では、業務のデジタル化を推進するため、数年前から人工知能(AI)の技術に精通した「AI人材」を百数十人規模で募集している。当時、人材募集の大々的なメッセージが話題になったほどだ。

 E社はこれまでの自社にいないスキルを持つ人材を獲得するため、シリコンバレー風のおしゃれなオフィスを用意。働きやすい職場であることをアピールした。

 しかし、結果として実際に採用できたのは数十人。当初の目標から大きく下回った。今やAI人材は多くの企業で引っ張りだこの状況なので、思い通りに採用できなかったのは不思議ではない。ただ、E社の人事制度が少なからず採用に影響を与えたことは否めない。事実、E社の採用担当者は「AIのスキルが高い候補者はいたが、当社の人事制度では能力に見合う処遇を提示できず、何人も辞退されてしまった」とこぼす。

デジタル人材を獲得するための具体策

 E社で採用が進まなかったのは、旧態依然とした人事制度はもちろん、AI人材の行動特性や考え方、採用の難易度を理解していなかった点もある。E社が渇望したAI人材をはじめ、専門的なスキルを有する優秀な技術者は最先端の技術を使い続けられる環境を求め、社会にインパクトを与える仕事をしたいと考えている。1社に安定的に所属する前提で作られた職能資格制度を導入するE社は魅力的に映らないのも当然だ。

 ひと口にAI人材といっても、その領域は幅広い。「言語」「画像」「音声」「制御」「最適化・推論」など、細分化されているのが現状だ。採用側は求める人材像を具体的にしてスキルの希少性を理解し、採用後にどんな業務をしてほしいのかを明確にすべきだった。面接の場ではそのような確認がなかったため、応募者が自分のスキルを正当に評価されないと考えるのも無理はない。

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