SIベンダーに勤務するエンジニアのGさんは、新システムを提案して案件を獲得した。ところが、要件定義を進めるうちに雲行きが怪しくなった。ユーザーの担当者と話していると腹の立つことが多いのだ。丁寧に説明しているつもりなのに、ユーザーの担当者が「結論は何なのだ」と声を荒げる場面もあった。何を言っても感情的な反応が返ってくるため、仕事が進まなくなった。

 システム開発における上流工程の大部分は対人コミュニケーション。「人と人なので、コミュニケーション上の感情トラブルは常にあり得る」(イントリーグの永井昭弘代表取締役社長兼CEO)。特に開発を担当するベンダーと発注者であるユーザーの担当者同士が感情面でトラブルになると、プロジェクトが全く前に進まなくなる。プロジェクトチーム崩壊の危機だ。

 こうしたトラブルの脱出法は「担当者同士でコミュニケーションをするという関係は変えず、コミュニケーションのクッション役となる人を置くようにする」(永井社長)といったもの。文句が出たり険悪な雰囲気が生まれたりしたら、クッション役の人が説明を言い換える。

 クッション役はコミュニケーションの癖を類型化した「ソーシャルスタイル」を意識する。ソーシャルスタイルでは、自分の考え方を主張する度合いと、感情を表す度合いの2つの軸で分類する。コミュニケーションの癖が対角線に位置する人は相性が悪い場合が多い。

 こうしたコミュニケーションの癖が、相手を感情的にさせている原因となっている可能性もある。クッション役となる人はこうした癖の違いを意識して、会議の空気が険悪になったら言い換えで介入する。

コミュニケーションの癖をタイプ分けした「ソーシャルスタイル」
対角線に位置する、相性が悪い相手のコミュニケーション方法にイライラしてしまう
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クッション役は第三者の立場で

 具体的には次のような手順でトラブルを脱出する。トラブルの渦中にいるベンダーの担当者は、まずは状況を上司に説明する。そして、会議への同行を依頼する。同行が決まったら、ユーザーに「次回は××(同行者)も参加します」と伝える。

 続いて、ベンダー側の同行者を加えたメンバーで会議を実施する。この際、同行者はベンダー担当者の代弁者になったり、謝罪して場を納めようとしたりしてはいけない。「まずは状況の把握に努める。大部分はコミュニケーション上のトラブルだが、ときどきユーザーの要求が理不尽、ベンダーの担当者が能力不足という場合もある。その場合はプロジェクトの仕切り直しやメンバーの交代が必要となる」(永井社長)。

 コミュニケーション上のトラブルであると判断できたら、次回以降の会議にクッション役を同席させる。クッション役は客観的な第三者の立場として同席する。あえてベンダー側に立たず、コミュニケーションを円滑にする役割に専念する。

 なお、このトラブル脱出法だと、会議で稼働するメンバーが1人増える。「残り期間が短期ならば、メンバーを交代するコストよりクッション役を置くコストのほうが小さい。ただ、残り期間が長期なら、交代したほうがコストが少なく済む可能性がある」(永井社長)。プロジェクトの残り期間に応じて判断するといい。