人間が手がけていた業務全てをAIに担わせようとするのは失敗の元。AIと人間の役割分担を明確にした設計で成果を出したのが塩野義製薬だ。

 「できない場合は『できません』と返すようにした。自信がある部分だけ結果を出力し、自信がない部分は出力せず人間に任せる」。医薬開発本部解析センターの北西由武Data Scienceグループ長はAI設計時の工夫をこう話す。「5割程度をAIに任せられるようになれば十分」と割り切り、2018年中に実用化するメドをつけた。

 同社が構築したのは、臨床試験の解析に必要な専用プログラム(スクリプト)を自動的に生成するAIだ。

(写真提供:塩野義製薬)
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 新薬の開発時に効果や副作用を検証する臨床試験では、事前に解析内容を明らかにしたうえで、患者の体温や症状などの試験結果を入力すれば自動的に表やグラフなどの解析結果を出力できるプログラムを用意する必要がある。臨床試験の結果と解析結果の間に人の操作を介在させないためだ。

 1回の臨床試験につき、100~300本程度の解析プログラムを作成する。1本の作成に1~2時間かかるプログラムもある。さらに2人が並行して同じ目的のプログラムをつくり、二つを照らし合わせて間違いがないかを確認する体制をとっている。膨大な作業量の負担をAIで軽減しようと考えた。

 2016年春から導入作業を開始。過去の解析計画書とプログラムの組み合わせを約50組ほど学習させたほか、計画書の表記の「揺れ」を吸収できるよう社内文書なども学ばせた。

 臨床試験の解析内容は時期によって変わるため新しい項目が含まれがちだ。医薬品の分野ごとの特定の解析項目が含まれることもある。AIによるプログラム生成では、過去の実績の経験だけでは確実でない部分は空欄にして、人手での追加作業が必要なことを明示するようにした。人による補助が必要な部分をはっきりさせるためだ。

 2017年夏に一部で試験運用を始め、同年末までに平均してプログラムの2~3割を自動生成できるようになった。この割合を5割に引き上げる技術的なメドもついたという。人間が作成に1時間かかるプログラムを、チェック作業を含め数分で生成した例もあった。

 AIと人間が役割を的確に分担することで成果を出す発想は、ブックオフオンラインが構築したチャットボットにも共通する。

 ブックオフオンラインも「すべてをAIで完結させようとしない」と割り切って設計したことが結果につながった。チャットボットで適切に回答させるのが難しいワードは「NGワード」に登録し、「コールセンターに問い合わせてください」と誘導するようにした。

 無理に全てをチャットボットで回答すると、正しい回答を出せずに顧客を混乱させ、結果として利用者の満足度が低下し、買い取り件数を増やす成果につながらないと判断した。

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