AIを使ったシステムを導入する場合、大きく4つの段階を踏むことになる。具体的には、AIの適用先を決める「企画」、AIを使った業務プロセスやAIと人間の分担を決める「設計」、精度が高く使い勝手のよいAIを開発する「構築」、AIを使いながら性能を継続的に高めていく「運用」である。

 企画、設計、構築、運用といった段階について、具体的にどのようなことをしなければならないのか。AIの導入で成果を上げている先進企業8社の取り組みを基に、AI導入を成功に導くためのコツを見ていこう。

導入効果が高い「使いどころ」を見出す

 社内の業務や製品・サービスのうち、どこにAIを適用すれば高い効果が得られるか。企画の段階で判断を誤り、見切り発車でAI導入するようでは成功はない。

 AIに適した領域を的確に選び、自社製品の競争力アップにつなげたのが島津製作所だ。物体に含まれる分子の質量を測定する同社の製品「質量分析計」が出力した検出強度の波形ピークがどこからどこまでかを判定するAIを構築した。

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 学習に必要な過去の分析データは大量にあり、AIの導入に最適な領域と判断した。実際、構築したAIは正解率93%と期待以上の精度を発揮した。

 「人手で判定基準を決めた自動化プログラムはどうしても2~3割の不正解があった。AI技術で壁を打破できるのではとの声が現場で上がっていた」。同社の分析計測事業部ライフサイエンス事業統括部の飯田順子シニアマネージャーは質量分析計のデータ処理へのAI適用を提案した経緯を振り返る。

 同社はこれまでもピークを自動判定していたが、判定基準は人間が決めていた。複数の成分のピークが重なったり、出力波形に雑音が載ったりしたときでもうまくピークを検出する基準をつくれなかった。このため分析計の利用者が数時間かけて出力結果を修正する必要があった。「目が痛くなるし、肩もこる。研究者の本来の業務ではないのだからコンピュータが代わってくれるのだったらどんなにありがたいかと言われてきた」(飯田シニアマネージャー)。

 修正の手間を省ければ、食品に含まれる成分の分析などの用途だけでなく、検出対象の成分が多い医療用途にも分析計を広げやすくなる。現場がそう考えていたところに、島津製作所と富士通のトップがITを使った「協創」の取り組みで2016年初めに合意。AI導入の第一号案件として質量分析計のデータ処理を選定し、2016年11月から共同開発を始めた。

 約2万件集めたデータの7割を深層学習の手法で学習させた結果、従来の手法では29%だった誤り率を7%まで下げられた。「不正解だったところも実用上問題ない精度で判定できていた」(飯田シニアマネージャー)ことから、2018年中に顧客に提供することを決めた。

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