「何でもいいから、とにかくAIを導入してくれと社長が言っているんだ。急ぎで、何かAIっぽいシステムを作らないと叱られてしまう。手を貸していただきたい」――。

 AI(人工知能)の導入や開発を受託するベンチャー、クロスコンパスの佐藤聡社長は「ウソと思うかもしれないが、こうした依頼は本当にある」と明かす。このような依頼をした企業がAIの導入で成功するケースはほとんどない。

 人間のクイズ王を破った米IBMの質問応答システム「Watson」や深層学習(ディープラーニング)の登場を機に、2012年頃に第3次AIブームが始まってから5年。今や多くの企業がAI導入の実証実験に乗り出している。

 だが一方で、実験から1年以上が経過した今でも実用化のメドが立たずにいるケースが相次いでいる。技術の限界、AIに学習させるための正確なデータ収集の難しさ、費用に見合う成果が見込めないなど理由は様々だ。

見切り発車や深層学習信奉が招く悲劇

 もちろん全ての挑戦が成功することはあり得ないし、新たな取り組み自体は賞賛すべきことだ。試した手段では実現が難しいと分かれば、別の手段を模索することもできる。今後、試験運用を経てAIの実用化にこぎつける可能性もある。

 ただしAIの実力を見誤ったり、従来の情報システムとの違いを知らずに導入しても、成功はおぼつかない。成果が上がらないまま実証実験ばかり繰り返し、いつしか出口のない無限ループへとハマってしまう。こんな悲劇を招きかねない。

 これまでAIの導入プロジェクトを数多く手掛けてきたAI開発ベンチャーなどの証言をまとめると、AIの導入に失敗する主なパターンは4つになる。

AI導入で失敗する4つの典型例
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 一つは、AI導入ありきで見切り発車してしまうケースだ。AIの導入で何を目指すか、必要なデータがあるか、導入対象の業務がAIに適しているかを十分に検討せずに企画するというものである。

 既存の情報システムの導入プロジェクトと同じように、目的や適合性を検討しなければ当然失敗する。だが空前のAIブームに踊らされるかのように「AIならなんでもできる」「とにかくAIを使ってみたい」と期待を先行させ、失敗に至るケースが増えている。

 「AIの理屈に合わない案件は絶対にうまく行かない」。コンサルティング会社のシグマクシスでAI分野を担当する溝畑彰洋ディレクターは断言する。同社はAIの導入を支援するに当たり、AIの導入には対象作業について「正解」を示した教師ラベル付きの学習データが不可欠である点を経営層に理解してもらうことを第一歩にしている。

 データ分析企業ALBERT(アルベルト)の上村崇社長は「プロジェクトが始まったら、まずAIの実用性を評価する指標を顧客企業と共同で検討し、合意する。それができない案件は先に進めないようにした」と話す。評価指標の合意がないために、いつまでも本格的な実運用の議論に入れないケースが複数あったからだ。合意を必須にして以降、実用化に到達するケースが目に見えて増えたという。

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