人工知能(AI)を活用しようとしたとき、難関として立ちはだかるのが機械学習モデルを作成する作業だ。回帰分析、ニューラルネットワークといった統計解析の多様なアルゴリズムから適切なものを選択し、コーディングする必要がある。作成したモデルの精度を高めるためにパラメーターを調整するチューニング作業も発生する。

 しかも機械学習モデルを組み込んだ経験のあるITエンジニアは少ないため、一連の作業に対するノウハウはまだ十分に浸透していない。このAI活用を阻む壁を、三井住友カードはある自動化ツールを活用して突破した。

 三井住友カードは2017年から会員顧客への販促活動などにAIを活用している。例えば、これまでのカード利用実績やWebサイトへのアクセス履歴などを基に、ゴールドカードに切り替える可能性が高い会員顧客モデルを作成。案内のダイレクトメールを送付するといった具合である。

 同社では以前から、与信管理や販促の部門で分析アルゴリズムに知見のある社員が、SAS Institute JapanのBI(ビジネスインテリジェンス)ツール「SAS」を駆使してデータを分析していた。ただし、業務を理解して最適な分析モデルを設計できる社員は限られていたために、課題を抱えていたという。

 販促を例に取ると、各部署からの作業依頼が分析モデルを設計できる一部の社員に集中し、依頼に回答するまでに長い時間がかかっていた。また、精度が高いモデルを人手で作り上げるには1年がかりになることもあり、与信管理以外では扱いにくかった。

学習の作業をツールが自動化

 課題を認識していた白石寛樹統合マーケティング部グループマネージャーは、「各利用部門がAIを自分で活用できる環境を整えたい」と考え、対策を探っていた。そのタイミングで新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)から、米データロボット(DataRobot)のAI分析ツール「DataRobot」の提案を受けた。

モデル作成作業の手間をツールで軽減
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 DataRobotの特徴は、機械学習の専門知識をほとんど必要とせずに学習モデルを自動で作成すること。分析対象のデータを学習させると、複数の分析アルゴリズムを自動的に実行。それぞれのアルゴリズムでモデルを作成し、精度の高さ順に一覧表示する。目的に合ったアルゴリズムの選択やコーディング、チューニングといった作業の負荷を軽減できる。

 モデル作成の手間を軽減できそうだと感じた白石氏は利用部門に声をかけ、2016年夏に実証実験に臨んだ。2カ月弱の期間で作成した分析モデルの精度は、これまで人手をかけて作っていたものよりも良好だった。これを評価し、採用を決めた。本番システムはNSSOLのクラウドサービス「absonne(アブソンヌ)」上で稼働させている。

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