前回書いたこととは別に、私が多くの企業でワークショップを実施して確信できたことがある。「コンプライアンス」という言葉に、ビジネスパーソンが良い印象を持っていないという事実だ。

 この言葉を発すると、ワークショップの受講者から笑顔が消え、目がうつろになり、果ては「極度のコンプライアンス偏重が成長戦略を阻んでいる」とまで言い出す。人事面もコンプライアンスでの減点が少ないほど昇進に有利になり、結果として誰も自らリスクを取ろうとしなくなるという。

 「だから、日本ではイノベーションが育たないんだ」といった見苦しい言い訳も飛び出すほどだ。しかし本当にそれでいいのだろうか?

 この記事はこれまでの連載記事と同様に、私が失敗体験から学んだ教訓をベースに2017年4月に執筆したブログ記事を大幅に加筆したものである。一部の文脈に既視感があったとしても最後まで読んでほしい。

GEに買収された直後に何があったか

 2004年4月8日にGEによるAmarsham買収が完了してから4日後に当たる4月12日。一番初めに、そしてたった一度だけ、GEの担当者が当時のAmarshamの日本オフィスに乗り込んできた。

 普通なら買収された会社の社長の首は飛び、ほかの経営陣も入れ替わるのだろうが、GEは違っていた。「これまで通りの成長経営を続けられるのであれば一切の干渉をしない」という方針だという。

 要は「売り上げを伸ばせ。そのために買ったのだから」ということだ。もちろん成長ができなければ、その限りではないという厳しい意味も含んでいた。

 買収によって即座に変わったのは、名刺(社名は「GE Healthcare アマシャムバイオサイエンス株式会社」となった)とメールシステムとパソコン、携帯電話事業者だけではなかった。日本の会社の行動規範に相当する「GE Value」と呼ばれる海外も含めたGEグループ全社員共通の「価値観」に加えて、最も徹底されたのが「インテグリティ&コンプライアンス」だった。

 今でこそ、コンプライアンスは一般的な単語だが、当時(14年前)の私たちにはなじみのない言葉だった。「コンプライアンスって何?」と辞書を引いたりしたほどだ。

 会社説明などはないまま、いきなり凄まじい数の弁護士とともにやって来たGEのインテグレーションリーダー(買収後に現場レベルでの会社の統合を率いる責任者)は最初にこういい切った。「GEはインテグリティとコンプライアンスを最も重視します。できなければワンストライクアウト。では、その宣誓書にサインをしてください」――。

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