近年のマーケティングテクノロジーの発展とともに、B2Bマーケティングに関わる大量のデータも簡単に集積できるようになってきました。その一方で蓄積・可視化されたデータを活用した意思決定は、意外と曖昧なまま残っているようにも感じます。そこで今回は、『統計学が最強の学問である』(ダイヤモンド社刊)の著者でデータビークル 代表取締役最高製品責任者である西内 啓氏にセールス&マーケティングでの統計学の有用性について話を聞きました。

データビークル 代表取締役最高製品責任者 西内 啓氏
1981年生まれ。東京大学助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長等を経て現在多くの企業のデータ分析および分析人材の育成に携わる。 2017年 第10回日本統計学会出版賞を受賞。
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ビジネスで統計学とはどのようなときに力を発揮するのでしょうか?

 統計学は、大量のデータから適切な意思決定を導く分野の学問です。日々の仕事や生活の中で、勘や経験だけで判断してしまうことも多いのではないでしょうか。一方で統計的な手法であると意識をせずに仕事の中で使っていることもあると思います。

 私が元々専門にしていた統計的因果推論という分野は、因果関係を正確に見つけるための学問です。デジタルマーケティングに関わる皆さんが実践しているであろう「A/Bテスト」は、”ランダム化比較実験”という統計的因果推論の一つの手法なのです。

 このように、大量のデータから因果関係を見つけることで、ビジネスの意思決定を下す際に大いに有用性を発揮できます。

以前よりも多くのデータが蓄積されているのに、ビジネスの現場での意思決定は、いまだに勘に頼った判断が多いかもしれません。こうした誤りをしないために、人間の感覚と統計学的に導いた結果が異なっている分かりやすい例はありますでしょうか?

 例えば、プロ野球を観戦していて3割打者が3打席連続でヒットを打たなかったらどう思いますでしょうか?

 打率が3割だから3回に1回はヒットを打つと考えてしまうのではないでしょうか。しかしその選手が3打席連続でヒットを打てない確率は34.3%です(筆者注:1-0.3=0.7を3乗したもの)。

 結果を聞いて、想像した以上に3打席連続ノーヒットという可能性はあるのだなと思われたのではないでしょうか。

 3割打者が5打席連続でヒットを打てない確率は16.8%になります。5打席連続ノーヒットだからといってスランプだと思いこんではいけません。バッティングフォームをいじって、ドツボにはまるケースもあるのではないかと思います。

確かにスポーツ観戦では熱が入ってしまい、「全然打てていないじゃないか」と感覚的に思ってしまいますね。このケースはB2Bの営業担当者の商談でも同じように考えることができそうですね?

 野球の例は一つの例です。B2Bでの商談の受注率となるとサンプル数が少ないので、誤差が大きくなることを理解しなければなりませんが、同じように考えることも可能でしょう。

 例えば、母集団が数万件あれば数%の差をあまり気にしなくていいですが、数十や数百件程度であれば注意が必要です。

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