コンピュータの中に世界を作り、過去の事象や未来の予測を自在に分析する。現実世界を丸ごとデジタル化する「デジタルツイン」の企業事例が増え始めた。米GEやインダストリー4.0を推し進める独シーメンスなどは、データワールドとIoTを駆使して既に成果を挙げている。

 データワールドの活用は、製造業でも進んでいる。その代表格が米ゼネラル・エレクトリック(GE)が推進している「デジタルツイン(Digital Twin)」だ(図8)。

図8 デジタルツインの構成
現実世界をバーチャルに投影し、それを基にフィードバック
[画像のクリックで拡大表示]

 デジタルツインは直訳すると「デジタルの双子」。工場や製品などの設計図や、IoTで収集したセンサーデータを使って、そっくりそのままコンピュータ中に現実世界の「双子」を作り出す。これに対して時間の経過をシミュレーションすれば、現実の工場や製品の稼働状況を予兆できる。

 同社は、デジタルツインを実現するために、自社のIoTデータ分析クラウドサービス「Predix」を使う。例えば、航空機のエンジンからデータを収集して「デジタルの双子」を作る。稼働状況を遠隔から詳細に調べ、保守メンテナンスに生かす。

 「VRとデジタルツインは、空間と時間を自由に操作できるという共通点がある」。こう話すのは、GEグローバルリサーチ ITチーフテクノロジーオフィサーのエリック・タッカー氏だ。遠隔地の製品や工場からデータを収集して、コンピュータ上で再現する。現地を訪れなくても製品や工場の様子を把握できる。

 「コンピュータ上の世界では、時間軸を自由に操作できる。これは強力な武器だ。例えば、1000日後に製品がどのような状態になっているか、シミュレーションできる」(タッカー氏)。未来を予知するのに有効な手段となるというわけだ。逆に、過去に遡って、トラブルの原因を突き止めるのにも役立つ。

 デジタルツインではHMDなどのメディアスーツを必ずしも使わない。GEの製品開発でも、3Dデータを視覚的に体感する必要がある場合は、プロジェクションマッピング技術などを主に利用する。製品の動きをシミュレーションして見るためなどに使う。

次ページ以降は日経 xTECH Active会員(無料)の方のみお読みいただけます。