サイバー戦争を研究していると思いがけない記事に突き当たって驚かされることがある。例えば、英文のオンライン記事の中などに、ちょっとした前例として取り上げられる形で現れたりする。このとき私が目にしていたのは、米証券取引所のナスダックが大規模なハッキングを受けていたという記述だった。

(提供=123RF)

 ナスダックといえば、多くのハイテク企業が上場する、米国を代表する証券取引所の一つだ。この事件は、ロシア政府の関与が疑われたとも報道されているので、国家安全保障上も大きな事件といえる。

 しかし、もう6年も昔の事件であるらしい。多少大きめでも海外で発生した事件は日本語メディアではあまり手厚く取り上げられないことがある。調べてみると、本件に関する日本語の報道は日本経済新聞電子版とウォール・ストリート・ジャーナル日本版にあったが、どちらも概略の紹介にとどまる。こうなると海外の記事や文献にあたらないと詳しい情報は手に入らない。

自分で探さなければ、きちんとした情報は手に入らない

 あたかもインターネット万能の時代が訪れているかのようにみえて、実際のところはどうもそうでもない。我々は何でも知っているような気にされてしまっているが、それは多分に錯覚であるといえる。今もなお、自分で探して取りに行かない限り、きちんとした情報は手に入らない。特に海外のものはそうである。

 国際政治の研究者として、サイバー戦争の実態を理解するべく、いくつかの事件を掘り返してきた。そういうと大げさに聞こえるが、入手した情報の大半は、インターネット上で探し出して手に入れている。この意味で、コツさえつかんでしまえば誰にでもできることでもある。

 このシリーズでは、私の研究者としての情報収集ノウハウと、それを使用して追ったナスダック・ハッキング事件の顛末を、その成果物の例として紹介していきたい。冒頭部分でノウハウを、それに続ける形で事件の顛末を描いていきたいと思っている。

次ページ以降は日経 xTECH Active会員(無料)の方のみお読みいただけます。