B2Bビジネスの効果を高めるマーケティングアプローチとして、アカウント・ベースド・マーケティング(ABM)に期待が集まっている。信用調査会社の東京商工リサーチ(TSR)は、データに基づく客観的なアプローチを目指し、約半年前からABMに取り組み始めた。同社はB2B企業に国内・海外の企業情報を提供し、ターゲットとする企業(アカウント)を意識したマーケティング活動を手助けするビジネスを展開している。

 今回は、TSRマーケティング部の弓削正範部長に、ABMを取り入れたマーケティング活動を実践するユーザー企業としての立場と、ABMに取り組む企業にデータを提供するサービス企業としての立場の両方で話を聞いた。前編ではユーザー企業としてのTSRがABMを実践した経緯とその成果をまとめてみた。

(聞き手は松本 敏明=ITproマーケティング、
記事構成は冨永 裕子=ITアナリスト)

TSRがABMアプローチを導入した背景

東京商工リサーチ 事業本部 マーケティング部の弓削正範部長
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 B2B企業がデジタルマーケティングを展開する際、B2C企業との大きな相違点として留意するべきなのは、アプローチするターゲットの数にある。国内でB2C企業のターゲットである世帯数は5184万あるのに対し、B2B企業がターゲットにする企業数は約152万社にすぎない(図1)。

アプローチするターゲットの相違
出典:東京商工リサーチ
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 消費者に比べて少ないとはいえ、152万ある不特定多数の企業に対してナーチャリング(興味喚起)をしたのでは無駄が増えてしまう。そこでTSRは、広く均等にアプローチするのではなく、ポテンシャルが高いお客様に絞ったアプローチの方が効率的と考えた。

 多くのB2B企業では、売上規模や従業員規模の二つを基準にしてお客様を評価し、そのスコアの高い順にアプローチをする。「この方法が本当に正しいのか。もっと効果的にやれる方法があるのではないかと考え、それ以外の属性項目を分析に加えようとなった」と弓削氏は経緯を述べた。

 TSRのマーケティング部門がABMのアプローチを導入したのは、「約半年前から」と弓削氏は言う。マーケティング部門はそのさらに1年前からMAツールを導入していた。この時は、スコアリングによって上位となった企業をリスト化して、営業部門に営業対象となるリード情報として渡していた。

 しかし営業部門には、マーケティング部門が作った有望な企業のリストをなかなか使ってもらえなかった。「どうしたらリストを使ってもらえるかで悩んでいたとき、ABMについて耳にしたのが意識改革のきっかけになった」と弓削氏は言う。

 TSRは企業情報の提供サービスを展開している。これまでに集めたデータに基づいたターゲットへのアプローチは、同社自身の事業との親和性が高いとも考えられた。

TSRにおけるABMの取り組み

 TSRは、ABMを「自社の顧客から優良顧客企業を定義して、それと同様の特徴・特性を持つポテンシャルアカウントをターゲットにするアプローチ」と定義している。TSRがどのようにABMに取り組んだかを順を追って見てみよう。

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