安くて軽い─。まるで第三のビールのような新ジャンルが勘定系に登場する。NTTデータがドイツのIT企業と組んで投入する新サービスだ。機能を絞り込んで銀行業に参入する際の需要を狙うが、成否は未知数だ。

 「機能は必要最低限。その代わりに早く安く導入できる」。NTTデータが2019年度以降に提供を始める新たな勘定系サービスについて、竹倉憲也第二金融事業本部ビジネス企画室長はこうアピールする。

 NTTデータはドイツのマンブーが開発するクラウド勘定系「Mambu SaaS Banking Engine(以下Mambu)」を客先に導入する。軽量勘定系とも言うべき新たなジャンルで、預金や融資、送金といった勘定系サービスを成り立たせるための機能に絞り込んでいる。

 QRコード決済や住宅ローンといった機能を追加する際はAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を通じて、外部から取り込む。システム基盤は米アマゾン・ウェブ・サービスのクラウド「Amazon Web Services(AWS)」を使う。

 料金はオープン環境で動作する勘定系パッケージの半額ほどに抑える考え。推定で総額数十億円となりそうだ。2025年までに同事業関連で100億円の売り上げを目指す。

図 NTTデータが提供する独マンブーのクラウド勘定系のシステム概要
必要なサービスをAPI経由で追加
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「BeSTA」置き換えは狙わない

 Mambuで狙うのは銀行業への新規参入を狙う企業やネット専業銀行の設立を考える金融機関などだ。こうした企業が運営しようとする銀行は「デジタルバンク」である。店舗やATMを持たず、主にスマートフォン経由で金融サービスを提供する業態だ。

 デジタルバンクの一例がLINEである。みずほフィナンシャルグループと組んで2020年にも新銀行を開業する方針だ。新銀行は個人向けのモバイル専業銀行として、スマホを活用して少額の送金や融資などのサービスを提供するとみられる。

 NTTデータは地方銀行向けで最大シェアの勘定系パッケージ「BeSTA」を持つ。だがデジタルバンクには機能が過剰な場合があると見て、軽量クラウド勘定系として「海外で最も実績があった」(竹倉室長)というMambuを担いだ。Mambuを扱うことにより、BeSTAの値下げを防ぎながら新たな需要を取り込む狙いもありそうだ。

 日本の金融機関とIT企業にとって、海外の勘定系パッケージ導入は失敗の連続だ。ボーナス払いなど日本特有の機能を備えておらずカスタマイズが膨らむことが要因である。NTTデータは現時点でMambuの初期の技術検証を終えただけであり、導入プロセスの整備などは今後の課題だ。

 もっとも60以上の金融機関が使うBeSTAを手掛けるNTTデータなら、海外製品を担ぐリスクは百も承知のはず。海外市場を狙うならまだ分かるが、当面のターゲットは国内だ。デジタルバンクの要望とMambuの特徴をいかにすり合わせられるかが、同社の新事業の成否を左右する。