楽天と西友が「楽天西友ネットスーパー」を本格始動させたのが2018年10月のこと。ネットスーパー事業だけでなく、「ワンデリバリー」構想を打ち出して物流サービスの強化も急ぐ楽天。物流戦略について、楽天のコマースカンパニー ロジスティクス事業ヴァイスプレジテントの小森紀昭執行役員に話を聞いた。

(聞き手は染原 睦美=日経 xTECH/日経コンピュータ)

楽天は「楽天マート」を、西友は「SEIYUドットコム」をそれぞれ独自で運営していた経緯があります。楽天が西友から得られるノウハウとはどのようなものでしょうか。

 生鮮の仕入れや管理の部分が一番大きいです。野菜、肉、魚、という生鮮3品と呼ばれるものに総菜を加えた4品。これをどれくらい仕入れ、どう管理するかのノウハウがこのビジネスには欠かせません。

 まず仕入れについては、西友のバイイングパワーでしっかりした単価、値入れ、売価で提供できるのは大きなメリットです。市場での調達や交渉力という意味では、新参者はこつこつやるしかありません。一方、既に売り上げ規模を持っている西友なら商品仕入れで無理なく規模を出せる。

 管理についても、細かいノウハウは西友の方が上です。例えば、冷蔵センターの中で野菜を管理する際に特に葉物は「風を嫌う」。風が直接当たらないところか、当たるなら新聞紙を置いて防ぐといったことで、適切に管理できます。廃棄ロスを減らすために、いつ頃にセンターに商品を入れるべきか、賞味期限をにらみながら商品管理をするノウハウは西友の方にあります。

2000年に西友が実証実験を始めてから約20年間、ネットスーパー事業は実質離陸しませんでした。その理由はどこにあったと思いますか

 離陸しなかったというよりは、これ以上の需要に応えていくには、店舗のオペレーションだけではそろそろ限界が見えてきたということではないでしょうか。少なくとも、西友が運営していたネットスーパーは順調でした。一方、1店舗が対応できる顧客数に限りがあるのに加え、店舗型のみだと当然店舗がないエリアに対応できない。新規に店舗を開業する手もありますが、それよりはセンター(倉庫)を立ち上げる方が効率よく顧客を獲得できるケースは少なくありません。

 センターを立ち上げる場合、店舗が存在しない場所で顧客をどのように獲得するかが課題になります。そこで全国に会員を持つ楽天のノウハウを提供できると考えています。

楽天のコマースカンパニー ロジスティクス事業ヴァイスプレジテントの小森紀昭執行役員。1995年住友商事入社、2011年同社子会社の爽快ドラッグ社長就任。楽天による買収にともない、2017年に楽天に入社。2017年7月にケンコーコムと爽快ドラッグの2社が合併し直販事業を手がけるRakuten Direct社長就任(現任)
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物流システムは統合していく

物流のシステムはどのように運用しているのでしょうか。

 現在、楽天と楽天西友ネットスーパーがそれぞれ利用しているTMS(Transport Management System=トランスポートマネジメントシステム)は、同じパッケージソフトを使っています。今後は両社の配送網を統合し、併せてTMSも共通基盤で動かしていく予定です。ソフトウエアについては、現状のパッケージソフトを使い続けるかは検討中です。既存のパッケージソフトでは現状の事業ニーズに応えられない部分があり、独自で新たに作ることも視野に入れています。

倉庫における省人化や自動化についてはどのような計画がありますか。

 まずは立ち上げスピードを最優先しているフェーズのため、大規模な自動化設備は導入していません。陳列は、ダークストア型と呼ばれる店舗内のロケーションを踏襲する形式ではなく、ピッキング効率を優先した並びにしています。

 次に立ち上げるセンターは、当然省人化を視野に入れて設備投資をしていきます。そのために現在何が必要かを検討している最中です。GTP(Goods To Person)のような作業員の手元に商品が来る方法もあれば、ロボットがピッキングをする方法もある。ネットスーパーの場合、注文1回あたりの商品数が多く、形状や重さもばらばら。常温、冷蔵、冷凍と保管状態も違えば、卵のように取り扱い注意の商品もある。事業の特性にあった倉庫のあり方を考えています。

千葉県柏市にネットスーパー専用センターを立ち上げました。今後は専用倉庫を拡大するのでしょうか。それとも楽天の倉庫と併用して使えるような形で拡大していくのでしょうか。

 まさに今検討中の課題です。ネットスーパー専用にすれば、レイアウトなどの面で生産性は上がります。一方、楽天のフルフィルメントセンターがそのニーズをくみ取った上で、両者を統合していくのが最終的にはメリットが大きいかもしれない。今後の重要な課題の一つだと思います。

フルフィルメントセンターを統合する方向になれば、入口となるECサイト側も統合されていくのでしょうか。

 その可能性は大いにあると思います。今は「ネットスーパー」という名称で主に生鮮食品を特徴としたECとして、他のサイトと区別しています。当然、入り口を一緒にすれば事業サイドとして相乗効果は高まります。まず考慮するべきは利用者の使い方ですね。その観点でどちらがいいのか、どのようなUX(ユーザー体験)が一番使いやすいのか、そういう議論になっていくと思います。

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