サーバー、ストレージ、ネットワークが1台に載るインフラ用のハードウエア新製品「PowerEdge MX」を発売した米デルEMC。同社は、「キネティックインフラストラクチャー」という新しい概念をアピールしている。その狙いなどを、サーバーとインフラのソリューションを担当するセクラー氏に聞いた。

(聞き手は山崎 洋一=日経 xTECH

米デルEMC サーバー&インフラストラクチャ ソリューション担当 プロダクトマーケティング ディレクター ジョナサン・セクラー氏
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PowerEdge MXは「キネティックインフラストラクチャー」を実現するという。これはハイパーコンバージドインフラストラクチャーとどう違うのか。

 ハイパーコンバージドインフラストラクチャーは、サーバーとストレージを密に連携させ、ソフトウエアを使ってコントロールしていくもの。最近は、ハードウエアリソースを細かいエレメントに分けて、ソフトウエアを使って任意の形、好きな組み合わせで提供していくコンポーザブルインフラストラクチャーも提唱されている。

 ただし、コンポーザブルインフラストラクチャーを真の意味で実現できているベンダーはまだいないと我々は考えている。サーバーのレベルにとどまっており、ストレージやネットワーク、メモリーまでは実現できていないのが現状だろう。

 キネティックインフラストラクチャーは、コンポーザブルインフラストラクチャーを完全に実現するという方向性を表したキーワードで、当社が2018年5月に開催した自社イベントで初めて提唱した。

 キネティックとは物理用語で、そこにあるけれども使われていない、潜在的なエネルギーのことを指す。せっかく使えるものがあるのに使われていない状況から、フルに使われて価値を生み出すという状況に持っていきたい。その想いをキネティックという言葉に込めている。我々の文脈で言うとハードウエアリソースを最大限有効活用して、ユーザーにベストな方法で使ってもらいたいというのが、この言葉の意味するところだ。

現時点では、どこまでハードウエアリソースを有効活用できるのか。

 サーバーとストレージ、イーサネットを自在に組み合わせてリソースを作るところまではできている。

 Gen-Z Consortiumをご存知だろうか。このコンソーシアムでは、サーバーの外にメモリーを置いて使うという形態における、メモリーの相互接続に関するプロトコルを作っている。デルEMCはこのコンソーシアムに参加している。米ヒューレット・パッカード エンタープライズや米エヌビディア、米AMD(Advanced Micro Devices)といったベンダーもいる。

 Gen-Zのような団体が、本当の意味でのコンポーザブル、そしてキネティックを実現していくうえでの母体となり、大きく貢献していくことになるだろう。PowerEdge MXも、将来はメモリーの分離と(他のエレメントとの)組み合わせに対応させていきたい。インフラストラクチャーを本当の意味でコンポーザブルにするためには、まず物理的にエレメントとして分離していかなくてはいけない。

キネティックを実現するMXは、従来のモジュラー型製品と構造上何が違うのか。

 まず、バックプレーン(背面基板)をなくしたこと。これによって、サーバーモジュールとスイッチングモジュールを直接つなげるようになった。従来のモジュール型製品は、このバックプレーンが制約となり、ポテンシャルが十分でないという部分があった。

 この変更は、ユーザー企業にもメリットをもたらすだろう。従来はバックプレーンがあるために、最新のテクノロジーを導入しようとしたときに、バックプレーンを交換しなくてはならなかったし、別途インストールの作業が発生していた。これではコストもかかるし、大掛かりな交換作業も発生する。バックプレーンがなければ、そういう作業は発生しないので、最新のテクノロジーを導入しやすくなる。

 またシャーシの中に、サーバーだけではなく、ストレージの相互接続部分とスイッチング機能が入ってくる。これでサーバーに、ストレージモジュールに載ったHDDやフラッシュメモリーを動的に割り当てられる。ストレージとコンピューティングを分離したうえで、必要な部分を切り出していけるわけだ。これが、本当の意味でコンポーザブルに近づく第一歩となる。

 管理機能もIT管理者が使いやすいように、PowerEdge MX向けに作り直して、動的に柔軟に管理できるようにした。例えばシャーシの中に新たにサーバーブレードを追加する場合に、自動的に検知して自動的に管理できるようにする。自動的にできるという点が重要だ。ユーザーからすると、リソースの作成や移動が容易になるので、コンポーザブルに大きく近づく。

キネティックインフラストラクチャーという考え方を、今打ち出したのはなぜか。

 キネティックインフラストラクチャーは、様々なテクノロジーが組み合わさってスムーズに一体となり動作して初めて、実現できるものだ。市場になかった新しいテクノロジーが出てくることによって、できなかったことが実現可能になった。世の中の機運も高まってきているし、マーケットのトレンドも背景にあるだろう。

 それからデルEMCはPowerEdgeに関して、オープンで業界標準に準拠したテクノロジーを使った製品を届けるという考えを持っている。例えば2年前なら、独自仕様にロックインするという状況が生じていただろう。だが今は独自仕様ではなく、オープンなソリューションを選ぶことで投資対効果が高まるというのが常識になってきていると思う。

 PowerEdge MXに関しても、我々の中だけで閉じるのではなく、パートナーのエコシステムを使って総合運用性を担保していく方向へ進めていきたいと考えている。

キネティックインフラストラクチャーがあると、仮想化技術は不要になる?

 仮想化は引き続き必要となる。仮想化は多くの企業が既に実践していると思うが、PowerEdge MXを使えばコンピューティングからストレージまでハードウエアリソースの有効活用も推進できる。それが、手持ちのITリソースをより有効に活用することにつながるだろう。