「Cloudflareに1651件の削除要請を行っても削除されない」「Cloudflareは裁判外での情報開示に応じなくなった」――。

 政府の知的財産戦略本部が2018年9月19日に公開した海賊版サイト対策案の文面には、米CDN(コンテンツ配信ネットワーク)大手クラウドフレア(Cloudflare)に対する著作権者の憤りともとれる記述が随所にあった。

 クラウドフレアは「漫画村」「Anitube」などの海賊版サイトに分散配信サービスを提供し、日本に設置したエッジサーバーから違法コンテンツの配信を中継していたとされる。

クラウドフレアの日本向けWebサイト
(出所:米クラウドフレア)
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 クラウドフレアは権利者からのコンテンツ削除要請にほとんど応じないことで知られる。このため、世界の海賊版サイトが同社のサービスを利用している。

 一方、著作権侵害を実質的に幇(ほう)助しているとして、米国で権利者から数々の訴訟が提起されている。先の対策案も、クラウドフレアのようなCDN事業者に「試行的にでも日本の著作権法第112条に基づく差止請求を行うべき」との意見を載せている。

 クラウドフレアは日本を含む各国の法執行機関の要請や命令に、どう対峙する方針なのか。クラウドフレアで公共政策を統括するアリッサ・スターザック(Alissa Starzak)氏に聞いた。

(聞き手は浅川 直輝=日経 xTECH/日経コンピュータ)


裁判所から削除命令やコンテンツ配信差し止めの命令が出た場合、クラウドフレアは命令に従うのか。

 米国の裁判所は一般に、そうした命令は我々のようなCDN事業者には出さない。命令はWebホスティング事業者に出す。

 我々CDN事業者の役割は、コンテンツのキャッシュデータを保持して配信を中継(キャッシング)し、コンテンツ配信のスピードを速めることだ。我々に海賊版サイトの配信を止めることはできない。仮に我々が当該ドメインのCDNサービスを停止しても、海賊版サイトは依然としてインターネット上に存在する。問題は解決しない。

裁判所の命令に基づき、クラウドフレアがサービスを止めた例もあった。学術論文の海賊版サイト「Sci-Hub」を米化学会(ACS)が著作権侵害で訴えた裁判の判決に基づき、クラウドフレアは2018年2月、当該ドメインへのCDNサービスを止めている。

 あの裁判は特殊なケースだった。まず、クラウドフレアは元々訴訟の直接的な当事者ではなかったことを強調しておきたい。裁判所は(CDN事業者やISPなど)裁判の当事者ではない媒介者を広く差し止め命令の対象にした。こうした事例は、米国でこれまで見たことがない。奇妙(odd)な命令だった。

クラウドフレア自身が裁判の当事者になった例もある。アダルトコンテンツ企業が著作権侵害でクラウドフレアを訴えた裁判で、カリフォルニア州連邦裁判所は2018年3月、「クラウドフレアは著作権違反コンテンツのキャッシュを配信することで、実質的に著作権侵害を幇助している」との判断を下した(その後2018年6月に両社で和解が成立)。この判断をどうみるか。

 この決定が正しい方法で成されたとは思っていない。米デジタルミレニアム著作権法には、我々のような媒介者の法的責任を一部免除する条項があるはずだ。裁判所が「実質的な幇助」という暫定的な判決を下したのは確かだが、最終的な判決が出たわけではない。

改めて確認したい。米国の裁判所が特定ドメインへのCDNサービス停止の命令を出した場合、クラウドフレアはそれに従うのか、従わないのか。

 例えば米国の裁判所がキャッシング停止の命令を出した場合、我々にキャッシングを止める義務が生じるのは確かだ。

 だが繰り返すが、CDNサービスを止めても配信の速度が遅くなるだけで、違法コンテンツはインターネットに残ったままだ。問題は解決していない。

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