「中嶋悟(なかじま・さとる)」と聞けば、かつてのF1レーサー時代の雄姿を思い出す読者も多いだろう。同氏は今、レーシングチーム「NAKAJIMA RACING」のオーナーとして全日本スーパーフォーミュラ選手権(SUPER FORMULA)に参戦している。2018年7月7~8日には、静岡県の富士スピードウェイで全7戦の内の第4戦が開催されたばかりだ。

 最高時速300km超でサーキットを駆け抜けるSUPER FORMULAのマシンは、F1マシンなどと同様、「センサーの塊」だ。ピットに入る度に100以上のセンサーからデータを取得し、車両や路面の状態などを分析して走行タイムの短縮を目指す。その競争は熾烈で、わずかコンマ数秒以下で順位が大きく変わってくる世界だ。2017年からはインドの大手IT企業、タタコンサルタンシーサービシズ(TCS)がスポンサーとなり、テクノロジーパートナーとして技術面をサポートしている。マシンが生成する膨大なデータに対して、分析の効率化や精度向上に取り組んでいる。

 中嶋氏がF1レーサーとして活躍した1987~1991年当時は、「走行中にドライバーが見たものがすべてだった」という。しかし、今やセンサーが取得するデータの活用は成功に不可欠なものになった。データ活用がレース界にもたらしたインパクトについて中嶋氏が語った。

(聞き手は増田 圭祐=日経 xTECH/日経コンピュータ)

2018年7月7~8日に富士スピードウェイで開催されたSUPER FORMULAの第4戦の会場の様子。2日間で延べ3万1400人が訪れた
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SUPER FORMULAにおけるデータ活用の重要性について教えてください。

中嶋 SUPER FORMULAのレースは、基本的に練習、予選、決勝とセッションが複数に分かれています。予選では15~16台のゴールタイムの差が0.5秒もないときがあります。百分の1秒に満たないわずかな差で、決勝のスタート位置が2つも3つも変わってきてしまうこともあります。

 このシビアな世界で、自分たちが走った結果をすぐにデータで見られることは確実に強みになります。戦略や走りの幅が広がるからです。一方で、データ活用によって上位チームのタイム差はますます縮まっています。幸い、我がチームの予選のポジションも少しずつ良くなってきています。

元F1レーサーの中嶋悟氏、現在は有限会社中嶋企画の社長を務める
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情報共有をスピードアップ

テクノロジーパートナーであるTCSとのデータ活用に関する取り組みについて教えてください。レーシングカーではかなり以前から、データの取得・活用がされていると聞いています。

中嶋 レース用の車両にデータロガーやセンサーを付けて、走行後に自分たちの走りをデータで見られるようになったのは、国内では20~25年くらい前からだと思います。

 今、TCSとはレースに関わる様々なデータの取得のみならず、チームのエンジニアが知りたい情報がリアルタイムに得られたり、分析結果をドライバーとスムーズに共有したりできるような仕組みを開発しています。

 以前は1つのセッションが終わってからチームで議論をして、次のセッションに備えるのが通例でした。しかしTCSと組んでからは、車両がピットインする度にレースの状況や車両のデータを分析して次の走りの改善へつなげられるようになりました。

 練習のセッションなどでは時間内にできる限りいろいろなことを試して、車両の状態や作戦を完璧に仕上げてから予選を迎える必要があります。ピットインの短い時間で、いかに効果的な情報を迅速に伝え合えるかが鍵です。

コースを駆けるNAKAJIMA RACINGのマシン。1回のピットインでドライバーとコミュニケーションを取ったり、車両のセットアップを調整したりできる時間は実質1~2分間しかない
(出所:有限会社中嶋企画)
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