NTTは2016年8月1日、セキュリティ専門会社として「NTTセキュリティ」を設立した。NTTコミュニケーションズをはじめ、南アフリカのディメンションデータ、2013年8月買収の米ソリューショナリーなどグループでバラバラに展開していたセキュリティ事業を統合して開発の強化と効率化を図る。NTTセキュリティはNTTの100%子会社で資本金は255億円。従業員数は1400人規模となる。NTTの代表取締役副社長で、NTTセキュリティの代表取締役社長を務める澤田純氏(写真1)に統合の狙いや今後の展開を聞いた(以下、敬称略)。

(聞き手は榊原 康=日経コミュニケーション


NTTセキュリティを設立した狙いを聞きたい。

写真1●NTTセキュリティの澤田純・代表取締役社長
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 セキュリティ対策の重要性については、改めて説明するまでもないだろう。サイバー攻撃の高度化やIoT(Internet of Things)の進展でセキュリティ対策の重要性は今後ますます高まっていく。NTTはこれまでもセキュリティ分野に力を入れてきたが、グループ各社でバラバラに取り組んでいたので一元化することにした。具体的には、各社が保有するプラットフォームを新会社に移管し、将来的に統合していく。新会社はサービスの開発に専念し、グループ各社に卸提供する。つまり、グループ各社の営業体制はこれまで通りで、営業力を最大限に発揮してもらう。

 新会社に一元化する意義は大きく、開発の強化と同時に効率化を図れる。投資の集約効果も見込め、セキュリティ対策の高度化はもちろん、IoTやConnected Car、ロボット、人工知能(AI)などに対応した新しいサービスの開発に積極的に投資していきたい。高度な知識や技術を保有する人材の獲得や育成も強化する。

統合はなぜこのタイミングになったのか。

 ここ数年間はトップライン(売上高)の拡大を優先してきた点が大きい。マネージド・セキュリティ・サービス(MSS)の分野にはNTTコミュニケーションズが早くから注力していたが、ディメンションデータもMSS事業を強化するために豪アースウェーブを買収。当社もソリューショナリーを買収して米国のMSS事業を強化した。買収と同時に統合すればよいと思うかもしれないが、強引に統合すると人材流出のリスクが高くなる。

図1●NTTグループにおけるNTTセキュリティの位置付け(出所:NTTセキュリティ)
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 海外では営業系の幹部が抜けると、顧客まで一緒に出ていってしまう。技術系の幹部が抜ければ、ノウハウの継承が問題となる。こうしたリスクを避けながら運営してきたが、いよいよ統合の機運が高まった。グループ各社がMSSを保有しているのでまとめようとなった。開発の強化と効率化という理由は分かりやすく、理解を得やすい。ただ、問題は営業体制。新会社が顧客に直接営業すると、グループ各社とバッティングしてしまう。そこで、新会社をサービス開発・卸会社と位置付けることにした。グループ各社の営業体制には基本的に影響なく、卸価格も低廉化すると宣言しているので歓迎されている。

 もっとも、現実的にはグループ各社で他社のプラットフォームも販売することになるだろう。それはニーズに応じて問題ないと考えている。一方、新会社も提供先を広げたい。メインはあくまでグループ各社になるが、他のSI会社にも卸していく方針だ(図1)。

新会社の事業規模をもう少し詳しく教えてほしい。

 従業員数は1400人規模で、世界14カ国に25カ所のオフィスを構える。SOC(セキュリティオペレーションセンター)は10カ所。北米事業本部は560人規模でソリューショナリーが、欧州事業本部は620人規模でNTTコムセキュリティがそれぞれ中心母体となっている。アジア太平洋事業本部は90人規模でアースウェーブとNTTコムセキュリティを中心に構成する。あとは日本事業本部が130人規模である。1400人の大半は開発とオペレーションで、技術に詳しい営業部隊も残している。

新会社の幹部人事を見ると、責任者が世界の各地域に分散している。この体制でうまくまとめられるのか。

 新会社はグローバル本社と地域事業本部(北米、欧州、アジア太平洋、日本)に分け、機能と地域に基づいたマトリックス組織を採用した(図2)。例えばグローバル本社のCTO(最高技術責任者)はソリューショナリーのMike Hrabik。普段は米ネブラスカにいて米国事業本部の本部長とCOO(最高業務執行責任者)も兼務する(2017年1月に米国事業本部のCEOに就任予定)。グローバル本社のCOOはNTTコムセキュリティのFrank Brandenburg。普段は独イスマニングにいて欧州事業本部のCEOも務める。

図2●NTTセキュリティの組織体制(出所:NTTセキュリティ)
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 このほか、グローバル本社のCAO(最高総務責任者)とCCO(最高コンプライアンス責任者)はNTTコミュニケーションズの与沢和紀。人事やITなどは日本においてコントロールしやすくする狙いがあり、日本事業本部のCEOも兼務してもらう。グローバル本社のCFO(最高財務責任者)はNTTコムセキュリティのMartin Naughaltyを、アジア太平洋事業本部のCEOにはディメンションデータのMartin Schlatterをそれぞれ抜擢した。

 何をしたいのかというと、幹部がマトリックスで役職を兼務することでワンチーム化を促進させる狙いがある。もちろん、重要なのはグローバル本社における役割になるが、担当地域の責任も別にあるため、一方的な批判が起こりにくい。バランスに配慮した議論が進みやすくなると考えている。

 ワンチーム化には共通意識とビジョンが重要。まず共通意識としては「インテグリティ(Integrity)」を掲げた。セキュリティ分野では「完全性」を意味するが、ここでは「誠実」の意味合いで用いている。信頼されるソリューション(Trusted Solution)を提供するのは当然として、その前段階の共通意識として「正しいことを誠実に手掛けていこう」という思いがある。現場の評価も高い。

 次にビジョンとしては「1年後にMSS分野でトップグループ入りを果たす」ことを掲げた。米IBMや米デル、米AT&T、米ベライゾン、米シマンテックをトップ集団とすると、我々はまだ2番手集団の“チャレンジャー”の位置付けになる。1年後にトップ集団に入り、3年後には世界一を目指すと社内で話している。

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