故障車両を駅員が撮影、スピード対応を実現

 それを示す、エピソードがある。ある駅の駅員が、ホームに入ってきた車両のパンタグラフが壊れていることに気付いた。その駅員が壊れた車両をiPadで撮影すると、異常時情報共有システムでその画像を見た電気設備関係、車両関係の担当者はすぐこれに反応、初動体制を素早く整えることができた。

三井良裕総合企画本部システム企画部副課長

 JR東日本の経営層の意向として、今回のiPad導入に関しては、現場主導の自由な活用を重視する、という方針があった。そのため、「異常時には、iPadで画像を共有せよ」とか、「異常時情報共有システムをチェックせよ」といったルールは特に設けていない。それでも、車両故障を見つけた駅員は所定の対応に加えて、iPadによる画像の共有を思い立ち、対応部署の社員もこれに素早く反応した。iPad導入プロジェクトを担当する三井良裕総合企画本部システム企画部副課長は、「組織の壁を越えて必要な情報をリアルタイムで共有できたことは、当社にとって収穫だった」と語る。 

つなぎっぱなしのFaceTimeで実況中継さながらの現地報告

 線路や鉄道設備の点検・保守を司る各地の保線技術センターや信号通信技術センターといった技術センターで重宝されているのが、iPadとiPhoneが標準搭載するテレビ電話機能「FaceTime」だ。現地の映像を見せながら、遠隔のセンターから必要なサポートを受けるなど気軽に使える。また、ポイント故障などが発生した際には、「FaceTimeをつなぎっぱなしにして、指令室の大型画面に現地の状況をリアルタイムで配信したこともある」(三井氏)。

 同社では2012年頃から、クラウド型のWeb会議サービス「V-CUBE」を使っており、遠隔地での打ち合わせなどに活用している。これに対し、FaceTimeはiPadさえ持っていれば気軽に使える、電話の進化形のような存在感で受け入れられている。「上司に『あ、そこじゃなくてもっと下の方を写して!』などと言われながら、現地の様子を報告できるのが便利だと聞いている」と三井氏は語る。

スマートカタログの画面。技術資料やマニュアル類の電子化と共有も急速に進む(掲載にあたり、文書名は伏せてある)
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 システム企画部が用意した機能で、駅員や技術系社員のほぼ全員が恩恵を受けているのが、ドキュメント共有の仕組みだ。同社には、膨大な技術資料やマニュアル類がある。これらをiPadで見られるよう、「ビジュアモール スマートカタログ」というクラウドサービスでドキュメントを管理、共有している()。

 分野別のグループごとにアクセス権を分けて運用しており、登録されたコンテンツは全体で1万超。今も急速に増え続けている。「重たい冊子やファイルを持ち歩かなくて済むし、持ってこなかったから確認できないということもない。打ち合わせの際に確認事項を持ち帰ることが少なくなった」(技術センターの担当者)と好評だ。