ビッグデータ分析で競合に差をつけるには、その担い手が不可欠だ。鍵を握るのがデータサイエンティストやデータ活用の推進組織である。先人は統計学よりも、業務知識やコミュニケーションスキルを重視する。外部とコラボレーションする素養を磨く必要もありそうだ。

BigData 018●現場との対話が気付きを生む(花王)
BigData 018●現場との対話が気付きを生む(花王)
花王のマーケティング開発部門マーケティング開発センターDBM室の石黒勲マネジャー(右)と遠藤克巳氏
写真:北山 宏一

 データ経営で知られる花王。その立役者が、2005年発足のデータ分析専門組織「デジタルビジネスマネジメント(DBM)室」だ。データ分析で漂白剤「ワイドハイターEXパワー」の2012年の販売金額を、2008年に比べて3倍に増やすなどの功績から、DBM室は業界で一目置かれる組織になった。DBM室の石黒勲マネジャーと遠藤克巳氏というベテランのデータサイエンティストの仕事ぶりを知れば、データ活用で企業競争力を高めるためのヒントが得られる(BigData018)。

 石黒氏と遠藤氏はともに1991年入社で、配属は研究所だった。石黒氏は「配送スケジューリングシステム」の開発に取り組み、物流に磨きをかけた。遠藤氏は、フロッピーディスクなどの磁気記録媒体やスキンケア化粧品の商品開発を手掛け、今でも店頭に並ぶロングセラー商品を生み出した。

 研究畑出身のデータサイエンティストということもあり、データ分析は得意分野である。石黒氏は、購買履歴データを基に消費者の商品への忠誠度を把握する「行動ロイヤリティー分析手法」を開発した功績の持ち主。遠藤氏は「消費者の購買行動ルール」の解明を続ける。

 そんな2人が重視しているのは、分析よりもむしろ利用部門との対話。「我々の仕事は、対話(アナログ)とデータ分析(デジタル)の比率がそれぞれ50%ずつ。これが理想」。石黒氏はこう話す。

 データサイエンティストは利用部門からの相談を待つという受け身の姿勢では通用しない。「こんなデータ分析結果があったら商品開発部門が喜ぶだろう、と想像して分析し、結果を持っていく。すると担当者が興味を持ってくれて、議論が進み、新たな発見がある。これがデータサイエンティストという仕事の面白さ」。遠藤氏はこう笑顔で話す。

 両氏の姿勢からデータサイエンティストには、業務知識や利用部門との対話力が求められることが分かる。だが、それだけでは不十分だ。

 石黒氏と遠藤氏は分析力のスキル強化にも余念がない。「統計学の基本的な素養はもちろん必要。それに加えて、最新のITツールやアルゴリズム、数理モデルを勉強し続け、新たな業務の課題を迅速に解決することが期待されている」と石黒氏は言う。

 花王は早い段階からデータ分析組織を立ち上げ、オープンソースソフトウエア(OSS)の統計解析ソフト「R」や市販のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)分析ツールなど先進的な技術・製品を使いこなす。そうして得たデータ分析結果を基に、利用部門と共同で仮説・検証し、具体的な改善策を進めることで、成果に結び付けている。

 データ分析官と利用部門との一体感が花王の強さの秘訣。だが、「分析を大切にする社風」(石黒氏)こそが、データ経営の根幹といえそうだ。

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