日経FinTech編集長の原 隆

 2016年10月、心温まるニュースが流れた。

 ニフティが1999年から始めた会員向け無料ホームページサービス「@homepage」の終了に伴い、俳優の阿部寛さんのホームページが移管したものの、当初のデザインを引き継いだことにファンが安堵したというニュースだ。

 阿部寛さんのホームページのデザインはインターネット黎明期によく見られたもの。デジタルネイティブ世代は違和感を覚えるかもしれないが、昔を知る人であればノスタルジーを感じさせる。逆に言えば、世の中のサイトはデザイン、使い勝手ともに大きく進化を遂げたということだ。

 だが、阿部寛さんのホームページに郷愁も違和感も覚えない人たちがいる。銀行が提供する法人向けインターネットバンキングを利用している人たちだ。

時が止まったままの法人ネットバンキング

 筆者は3年前、ある理由で法人インターネット口座を開いたことがある。おののいた後、すぐに利用をやめた。そこに広がっていたのは、1990年代から時が止まったのではないかと思われる、利便性の極めて低いウェブサイトだった。

 だが、それだけならまだ我慢して利用していたかもしれない。納得がいかなかったのは、およそ顧客視点とは言えないインタフェースと利便性に対し、毎月2000円前後の利用料金を支払わされることだった。

 ネットバンキングを個人で利用している人たちは不思議に思うかもしれない。なぜなら銀行の多くは個人向けネットバンキングに対しては果敢に投資を続けているからだ。スマホアプリを提供する銀行も増え、利便性向上に力を注いでいる。だが、有料の法人ネットバンキングは進化を止めたままだ。よりセキュアでなければならないという意向はあるにせよ、あまりにも顧客視点を欠いている。

 銀行の多くはFinTechに力を注ぐ。そしてスタートアップ企業によるピッチコンテストを開いたり、実際に協業に踏み出したりと、意欲的な銀行も増えてきた。だが、スタートアップ企業の経営者からは戸惑いの声が漏れる。「銀行が自分たちと一緒にやってくれるのは嬉しいんです。ただ、その銀行で法人口座を開設しようとしたらMac OSに対応していないんです」。

 別の経営者と献酬を重ねているとこうも言われた。「金融業界がブロックチェーンなどの次世代技術への投資が必要なのは分かるが、まず今の環境を改善するのが先ではないか」。

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