京都市が2014年から81億円を投じて進めていた基幹系システム刷新プロジェクトが失敗した事案が、ついに訴訟合戦に突入する。2017年12月8日、京都市議会(京都市会)は門川大作市長名義で提出された訴えの提起を全会一致で可決した。刷新が遅延した原因となったバッチ処理のマイグレーション(開発言語と業務ロジックを引き継ぐ移行)を受託したITベンダーのシステムズ(東京・品川)に対する訴えである。

京都市役所の外観
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システムズは2億円を求め、京都市は8億円を求める

 京都市の情報システム部門に当たる総合企画局情報化推進室の担当者は日経コンピュータの取材に対し、訴訟額は約8億円、正確には7億9976万2365円となると回答。内訳は既にシステムズに支払っていて返還を求める額が5億662万5000円、稼働遅延に伴う既存システムの延長稼働などの損害賠償金が2億2043万1696円、弁護士費用が7270万5669円という。

 もともと京都市は30年前からNEC製メインフレーム上で基幹系システムを稼働。主にCOBOLプログラムで開発してきた。この刷新事業に対し、システムズは2016年1月15日にバッチ処理のマイグレーションを予定価格13億9719万6000円の約79%に当たる11億376万円で落札。京都市や工程管理支援業者などと、2017年1月から基幹システムの順次刷新を目指していた。

 ところが稼働が遅延。京都市は第三者の専門家による「京都市大型汎用コンピュータオープン化事業検討委員会」を立ち上げ、原因究明と今後の方策検討を託した。検討委員会は2017年6月に調査報告書を市に提出。だがシステムズはその結果を承諾しなかった。京都市は「遅延の根本的な原因に対する見解に大きな乖離がある」として、2017年10月11日に同社との設計・開発等業務委託契約を解除した。

 これに対し2017年11月8日に、システムズが京都市に対して約2億円を求める訴訟を東京地方裁判所に起こした。2017年4~7月の作業費の未払い分とする1億9900万円を支払えというものだ。

 システムズの訴訟を受けて、京都市の門川市長は11月15日、市長記者会見でシステムズの訴えを「もってのほか」と一蹴。「裁判でしっかりと明らかになれば解決する」とし、京都市は提訴を決めるに至った。

 結審までは数年かかるとみられる。IT訴訟ではベンダー側は「プロジェクトマネジメント(PM)義務」に、ユーザー側はベンダーに協力する「協力義務」に違反する行為がなかったかか争点になりそうだ。

仕切り直しに動く京都市

 訴訟合戦と並行して、京都市は本来の職務を全うしなければいけない。中断していたシステム刷新プロジェクトの仕切り直しだ。2017年11月6日の京都市会で明らかにしたのは、基幹系システムのうち福祉系の稼働時期を当初計画より3年遅れの2020年1月、住基・税系を3年2カ月遅れの2021年1月に稼働させるという新たなスケジュールである。

 アプリケーションの刷新費用は合計で8億円増える。移行済みのオンラインシステムはテスト増などで5億円増えて35億円、バッチ処理は3億円増の17億円という計算だ。構築済みのクラウド環境などを含めると、システム全体としては100億円となりそうだ。

 仕切り直しに際し、京都市は失敗を踏まえた反省とみられる改善策を打ち出している。前回は一般競争入札での選定方式に低価格方式を取っていたが、次の入札では総合評価方式に変える。総合評価にはベンダーに自治体への納入実績や、「プロジェクト管理能力を持ち企画から運用までを担える」だけのシステムインテグレーター(SIer)としての実績を評価項目に盛り込むとしている。

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