「月末です。経費精算を忘れないように」。記者の社用携帯電話に、上司からメールが届いた。「ああ、またこの時期か。会社に戻って精算しなきゃ。めんどくさいなぁ…」。取材先からしぶしぶオフィスに戻る。

 日々の交通費に出張旅費、取材先などとの会食代。各種の経費を精算するために、記者はいつも月末にまとまった時間をとられてしまう。

 オフィスの自席にあるPCから経費精算システムを立ち上げ、紙の領収書を見ながら出発地と目的地、金額を一つひとつ打ち込む。結果を印刷して紙の領収書を添付し、上長に提出する。交通費の入力業務は電子化されているのに、紙の業務が介在するがゆえにオフィス内でしか申請できない。この制約が、ビジネスパーソンをオフィスに縛る。

 「毎日、こまめに精算すればいいではないか」。正論である。今月こそは。何度となく思い立ったが、しかしできない。かくして今月も、記者のサイフにはタクシーなどの領収書が束になっていた。

間接業務が働き方改革の「足かせ」に

 「『働き方改革』は、第三の矢、構造改革の柱となる改革である。(中略)。ロボットからビッグデータ、AIまで、デジタル技術の活用が進む中で、働き方も間違いなく変わってくる」。9月27日、安倍晋三首相は第1回働き方改革実現会議でこのように述べたという(首相官邸ホームページより)。

 むやみな長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現、そしてワーク・ライフ・バランスの改善や労働生産性の向上――。政府は働き方改革を進めて、日本の労働環境にまつわる問題の解決を目指すとしている。国際的には低いとされる労働生産性を高めることにつなげるため、経営者の関心も高い。

 政府が実現手段の柱の一つに挙げているのが、「テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方」の実現だ。ITの活用などを通じて、オフィスや自分の席といった場所にとらわれず、どこでも自分のペースで仕事ができるようにする。

 テレワークそのものは、政府が働き方改革を掲げる前から注目を集めていた。電子メールやグループウエアをノートPCや携帯電話から利用する、営業資料をネット経由で参照して客先で見積もりを出す、自宅のPCから社内システムにアクセスする。ホワイトカラーの仕事をする場の自由度は着実に増している。

スマホで領収書を撮影すると経費精算ができる。
(写真:陶山 勉、以下同)
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 その一方で、不自由さが残っているのが経費精算をはじめとする間接業務だ。紙のレシートや領収書をオフィスに持ち帰り、伝票を印刷して添付する。物理的な作業が残る限り、ビジネスパーソンは精算業務によってオフィスに縛られる。こうした間接業務を放置したままテレワークを導入しても、その効果は薄れてしまう。

間接業務改革で働き方改革の土台を

 これまで日の当たらなかった間接業務改革に、ITを使って取り組む企業が相次いで登場している。日経コンピュータ2016年10月27日号では、間接業務改革に取り組む企業や支援サービスを紹介した。

 住宅設備機器最大手、LIXILは間接業務改革に乗り出した1社だ。第一弾として取り組んだのが経費精算業務を電子化するシステムの導入である。

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