星野 源と新垣結衣が演じる火曜ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系、火曜午後10時)が話題になっている。結婚に興味のない独身ITエンジニア(SE)の星野が、家事手伝いを依頼する新垣と契約結婚し、次第に結婚の意義を見いだすドラマだ。筆者が注目するのは、適齢期を越えた独身職業の象徴が「ITエンジニア」として描かれていること。晩婚化や少子化が叫ばれる中、ITエンジニアの“結婚離れ”がクローズアップされているのだ。

 実際、IT業界の結婚離れは数字にも表れている。総務省が5年おきに公表する「就業構造基本調査」によると、2012年時点での全業種の35~44歳の未婚率は26.4%。これに対して情報通信業の同年代の未婚率は35.4%に上る。他の業種と比べても高い水準で、独身が多い職業の象徴としてITエンジニアが取り上げられるのもうなずける。

 もちろん人生は人それぞれなので、ここで結婚を是として語るつもりはない。だが、実は業界特有の事情によって、結婚願望があるのにしない(あるいはできない)としたらどうか。「挑戦するITエンジニアを支援する」がコンセプトの日経SYSTEMSとしては素通りできない。そこで、いくつかの事例からITエンジニアの結婚観を考えてみたい。

「結婚できない」「化粧がのらない」7K職場

 そもそもITエンジニアが結婚しない理由は何か。十数人のアラフォー独身ITエンジニアに話を聞くと、その理由は大きく四つに集約された。(1)仕事に追われてそれどころではない、(2)これといった良い相手がいない、(3)そもそも結婚するメリットがない、(4)出産・育児でキャリアが損なわれる――の四つだ。

 ITエンジニアが結婚しない大きな理由の一つが(1)仕事に追われてそれどころではないことだろう。例えばある女性ITエンジニアは現在38歳。スキルを評価されて各プロジェクトから引っ張りだこだ。しかしプライベートの時間がまるでない。「独身だから」をいいことに、上司から次々と仕事が降ってくるという。婚活する時間などそもそもない。あったら休息に回す、というのが本音だそうだ。

 「IT現場ではこれまで3K(きつい、厳しい、帰れない)と言われたが、最近では7Kまで増えてしまった」。こう強調するのは、情報処理学会 ITプロフェッショナル委員長の旭 寛治氏だ。7Kとは、先の3Kに「規則が厳しい」「休暇が取れない」「化粧がのらない」、そして「結婚できない」が加わる。情報サービス産業協会(JISA)が調査した「働き方・休み方の改善に向けたアンケート調査」によると、主要ITベンダー(285社)の平均月間残業時間は40時間以上が15.1%に達した。厚生労働省が公表する「時間外労働の限度に関する基準」は1カ月の残業時間の限度が40時間(労働基準法36条では月45時間、裁量労働制の場合は労使の合意による)なので、これに照らせばIT現場の1割半はいわゆる“ブラック職場”とされる可能性がある。

 根本には慢性的な人手不足や何層にも及ぶ下請階層構造、無茶な請負契約による無給作業などがある。ある30代のITエンジニアは自身の仕事を「緩やかな自殺」と表現したのが記憶に残る。そんな会社は辞めたほうがいい。最近では残業ゼロ職場を実現し、逆に業績を伸ばす開発会社もある。結婚を考える前に、まず転職を考えなければ身が持たない。

出会いは「虎穴に入らずんば虎子を得ず」

 (2)これといった良い相手がいない、というのはその通りだろう。年齢を重ねれば自己のスタイルが確立し、どんな人でもパートナーの条件が厳しくなる。表向きの「誰でもいい」はウソである場合が多いのではないか。

 一方で「モテない」と嘆くITエンジニアもいる。紹介を受けてもうまくいかない。だからさらに自信をなくし、それがモテ度をより下げる。「もう結婚なんて無理」とぼやく30代のITエンジニアもいるが、本人がモテないと思っているだけで、実はそうではない場合が多い。単に出会いが少ないのが原因だと言っていい。

 IT業界に限った話ではないが、最近は職場で「結婚しないの?」なんて聞くのは完全にアウトだ。現在部下が100人以上、かつて3組の仲人を務めたというあるITベンダー幹部は「時代変わった」と話す。「最近は誰が結婚しているかさえ分からない。紹介したい人がいても声を掛けられない」(同氏)。本当は紹介してほしい人には機会損失だ。こうなると良い相手を見つけるには自ら「出会いの強化」をするしかない。今の時代、出会いのバリエーションは広い。ネット婚活も当たり前の時代だ。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」である。

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