ちょうど1年前に話題となった携帯電話料金の引き下げ議論。安倍晋三首相の指示を受け、総務省のタスクフォースで検討した結果、「スマートフォンの料金負担の軽減」「端末販売の適正化」「MVNO(仮想移動体通信事業者)サービスの多様化を通じた料金競争の促進」の3つの方針を打ち出して決着した。

 総務省は2016年10月13日、進捗状況を検証するため、「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」を開催する。フォローアップを目的とした会合は5月26日にも開いたが、“2年縛り”問題を中心とした消費者保護などに議論が発散してしまい、消化不良に終わった経緯がある。

 今回はこの反省を踏まえ、料金の低廉化や端末販売の適正化、MVNOの競争環境などに議論の対象を集約。会合も1回限りではなく、11月上旬までに合計3回程度開く。高市早苗・総務大臣も都合が付く限り出席する方向で、9月27日の閣議後記者会見では「スマートフォンを国民の生活インフラとして定着させるには移動通信市場の競争をさらに加速させていく必要がある」と意気込みを示した。

 単なる進捗状況の確認で終わるとは思えず、「一体、どのような施策が打ち出されるのか」と業界関係者は身構えている。携帯電話大手3社には「逆風」、MVNOには「追い風」の決着となる可能性が高く、不安と期待が入り乱れる。以下では、今回のフォローアップ会合の注目点を紹介したい。結論を先に述べると、最大の標的はソフトバンクと見ている。

算定方法の見直しで接続料格差は縮小へ

 総務省は今回の会合に当たり、「競争の加速」「通信サービスと端末のより自由な選択」の2つの方向性を掲げている。抽象的で分かりにくいが、「接続料の適正化」や「SIMロック解除の円滑化」などを検討するという(図1)。

図1●フォローアップ会合の方向性(出所:総務省)
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 接続料の適正化については、「モバイル接続料の自己資本利益率の算定に関するワーキングチーム」と呼ぶ下部会合を設けて10月6日に議論を開始済みである。接続料は電気通信事業法の第34条第3項で「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの」と定義されているが、現状では利潤の算定において携帯電話事業者の裁量の余地が大きくなっているため、見直そうというものだ。

図2●携帯電話大手3社の接続料の推移(出所:総務省) 接続料は前年度実績に基づいて算出しており、図中の算定期間年度の2014の項目が2015年度適用のパケット接続料となる。本文では2016年8月に改定後のパケット接続料を記載したため、図中の数字と異なっている。
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 問題となっているのは、利潤の算定に用いる自己資本利益率。「β」(ベータ)と呼ぶ値を用いて事業リスクや財務リスクを反映できるようになっており、その算定方法が携帯電話大手3社で異なる。βの値は公表されていないが、「ソフトバンクが突出して高く、接続料格差を生む一因となっている」(業界関係者)。大手3社の過去5年間のβを比べると、「最大1.62倍の開きがある年度もあった」(総務省)。

 すなわち、最大の狙いは「携帯電話大手3社の接続料格差を縮めること」にある。2015年度適用のパケット接続料は、NTTドコモの月78万4887円(レイヤー2接続、10Mビット/秒当たり)に対し、ソフトバンクは月115万1355円(図2)。1.47倍の開きがあり、βの見直しで縮めるわけだ。

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