日経情報ストラテジーは毎年1人、「データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー」を選出している。4回目となる2016年の受賞者は、パイオニアのデータサイエンティストである鎌田喬浩氏に決定した(写真1)。

写真1●パイオニアのデータサイエンティストである鎌田喬浩氏
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 2006年にパイオニアに入社した鎌田氏は2年目から一貫して、カーナビの新サービス開発に携わってきた経歴を持つ。開発プロジェクトに参加した2008年当時はまだ、ビッグデータという言葉もなかったが、当時からパイオニアには、カーナビから上がってくる大量のプローブデータ(車の走行データ)が存在していた。それらを分析し、カーナビの機能改善や新サービスの開発につなげられないかを検討する日々が始まった。

 それから約8年。現在はビッグデータ分析の経験を生かし、AI(人工知能)の実用化にも動いている。カーナビに搭載したカメラで撮影した大量の画像を使い、画像から道路の渋滞を自動判別する新サービスの開発に取り組んでいる。

カーナビからの画像収集が転機

 鎌田氏に転機が訪れたのは2013年のことだ。この年パイオニアは車にカメラを搭載。同社のカーナビを利用するドライバー同士が道路の状況を画像で融通し合える新サービス「スマートループ アイ」を始めた。このサービスは好評で、今も進化を続けている。この間に集まった画像の数は、既に1億枚を超えているという。

 スマートループ アイは車が決まったポイントを通過すると自動で写真を撮り、パイオニアに送る仕組みになっている。ただし、やみくもに写真を撮っているわけではない。写真が多すぎても無駄が多いだけで、処理コストが跳ね上がる。

 そうではなく、鎌田氏はプローブデータからあらかじめ、渋滞がよく起きる場所や混雑しやすい駐車場の入り口などを割り出し、その場所に絞って写真を撮るように設計している。そうして絞り込んで集めた画像のなかから、ドライバーに役立つ情報を素早く吸い上げるわけだ。こうすることでドライバーは該当箇所に到達する前から、渋滞などの状況を画像で確認できるようになった。これは大きな進歩だ。

 筆者はパイオニアがスマートループ アイをリリースした2013年以降、およそ1年に一度のペースで鎌田氏に会ってきた。そして再会するたびに、鎌田氏が新しいテーマに挑戦していることを知ることになる。筆者は今年のデータサイエンティスト・オブ・ザ・イヤーの選考にも関わったが、鎌田氏を推した大きな理由の一つは、データ分析を駆使した“発明”に絶えず挑み続けていることだった。

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