「AWSが早くサービスを始めたいと、かなり前のめりだった」。VMwareとAWS(Amazon Web Services)が約1年をかけて提供にこぎつけた新サービス「VMware Cloud on AWS」の舞台裏を、ある関係者はこう話す。VMware Cloud on AWSは、AWSのデータセンターにあるサーバーに「vSphere」や「Virtual SAN(VSAN)」「NSX」といったVMwareの仮想化製品を導入し、VMwareがオンデマンドサービスとして提供する。

 2017年8月27日(米国時間)、発表の場となった「VMworld 2017 US」には、両社のCEO(最高経営責任者)がそろい踏み。「vCenterを使ったオンプレミスと同じ運用をAWS上で実現できる」(AWSのアンディ・ジェシーCEO)、「VMware Cloud on AWSでクラウド移行を加速できる」(VMwareのパット・ゲルシンガーCEO)と、メリットを強調した。

VMware Cloud on AWSを説明する、VMwareのパット・ゲルシンガーCEO(左)、AWSのアンディ・ジェシーCEO
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 オンプレミス環境にあるVMwareベースのシステムを、潤沢なリソースを持つAWSのデータセンターへ、改変の手間無く移行できる。オンプレミスとクラウドでそれぞれ大きなシェアを持つ両社の手による新サービスは、次世代システムに与える影響が大きい。ただ手は結んでも、見る夢は異なる。一大協業の裏を読んだ。

VMware製品の導入企業は50万社

 AWSの人気は高く、米Synergy Research Groupが2017年7月に発表した調査結果によれば、全世界で約34%のシェアを占める(Cloud Infrastructure Services-Q2 2017 Market Share&Revenue Growth)。今、AWSの最大の関心事は、オンプレミス環境で稼働するエンタープライズシステムの本丸をいかに引き込むかにある。

 AWSはセキュリティや堅牢性を高め、エンタープライズ用途に耐えると訴えてきたが、思ったほどの成果は上がっていない。「Netflixのように全てがAWS上にある例もあるが、ほとんどのエンタープライズはクラウドジャーニーの初期段階にある」(AWSのジェシーCEO)というのが現状認識だ。

 VMware上で稼働するエンタープライズシステムをそのままAWSに持ってこられるVMware Cloud on AWSは、絶好の商材。VMware製品を導入している企業は全世界で50万社に上る。こうした顧客をVMwareがAWSのデータセンターへ送客してくれる。AWSはVMwareに自社製サーバーを払い出し、データセンターの中に「VMware島」を作るだけなので事業リスクも低い。AWSにとっては良いところだらけの協業であり、サービス開始を急いだという話もうなづける。

 しかし、AWSが狙う真の果実は、AWS上にVMwareシステムを移行した後にある。

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