今夏、英国へ旅をした。ほぼ10年ぶりに「霧の街」ロンドンをふらふらしながら、気付いたことがある。とにかく居心地がいいのだ。10年前は、もう少し閉鎖的な印象があっただけに意外だった。

 理由を考えてみると、二つあるように思う。一つは人間の多様性を許容する空気が醸成されていたように私には感じられたこと。英語が得意でなく、しかも「平たい顔」のエイリアン(外国人)に対して、差別や孤独を感じさせず街の人々が親切に接してくれる。言語や文化が違うコミュニティがたくさんありながら、互いにうまく接点を見つけて共存しあう生活の知恵がそこにはあった。肌感覚としては、シンガポールの過ごしやすさに近いかもしれない。

 おかげで、街歩きが想定以上に快適でそして愉快だった。おまけに「英国は食事が不味い」という定説はもはや過去のもの。市場でかじりついたミートパイも、競馬場の屋台でありついたフィッシュ・アンド・チップスも、路地にたたずむインド料理店のカレーも、そして金融街のこじゃれたレストランのステーキも――。いずれもかなりハイグレードで、私の胃袋は終始喜びっぱなしだった。

 この10年で街の有り様をここまで一変させたものがあるとすれば、きっと2012年に開催したロンドン五輪なのだろう。東京五輪を控えた日本人の一人としてぜひ見習いたいと感じる。あの空気を、今の東京で私たちは演出できているだろうか。

ロンドンではパブでもモバイル決済

写真●英国ロンドンではモバイル決済端末が当たり前に使われていた
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 心地よさのもう一つの理由は、ショップやレストランに必ずと言っていいほどモバイル型のクレジットカード決済端末が置かれていて、クレジットカードによる支払いが実にスマートにできることだ。

 慣れない国の紙幣や小銭での支払いに結構どぎまぎしてしまう私。「スリー、クオータ」などと店員言われた日には一瞬で頭が真っ白になり、結局お札を出して小銭が次々とポケットに貯まっていく口だ。できれば少額でもクレジットカードで支払いたい。

 ロンドンの大半のショップやレストランでは、モバイル決済端末を抱えた店員の方から私のところへやってきてくれる。そして目の前で支払い処理を実行。渡したカードをスワイプし、端末に表示された金額を確認。パスコードを打ち込むよう促される。4桁の数字をボタンで押したら、端末がレシートを印字開始。レシートとカードを(そして、たいてい満面の笑顔も)受け取ったら、席を立てる。客が決済のために費やす時間はだいたい数十秒といったところか。

 ICチップ入りのクレジットカードが日本以上に普及しているからこそ、店側もパスコード対応のモバイル決済端末を積極的に導入しているのだろう。繁華街に立ち並ぶパブでさえ、当たり前にモバイル決済端末が置かれている。べろべろに酔った客たちがカード片手にカウンターにずらり陣取り、バーテンダーがモバイル決済端末とギネスビールを抱えて忙しく動き回る光景は、日本人の私にはなかなか驚きだった。おまけに、人間という動物は、相当酩酊しても4桁の数字は忘れない事実も身をもって学んだ(私自身がそうだったからだ)。

 店員が客の元に動き、その場で支払い処理を一気に進める英国式のカード決済。実に効率的だし、裏を返せば“オモテナシ”の心すら感じてしまう。「カードを一旦預かって客を待たせる」「客にレジまで動いてもらい列に並ばせる」といったことがなく、目の前で支払いすることでスキミングされる恐れの少なさもアピールできていて素晴らしい。

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