本当に顧客の役立つシステムになっているか、機能不足や改善点はないか。導入現場の課題を知ろうと、自ら「海の家」の経営に乗り出したIT企業がある。システム開発を手掛けるセカンドファクトリー(東京都府中市)だ。

 小田急電鉄江ノ島線の終着駅、片瀬江ノ島駅から歩いて5分。若者や家族連れで賑わう片瀬東浜海水浴場の入り口そばに、「SkyDream Shonan Beach Lounge」はあった。灼熱の太陽に時折吹く潮風、海水浴客で溢れかえるビーチ。誰の目にもITとは縁遠いように思える現場に、セカンドファクトリーは自社開発のタブレット型POS(販売時点情報管理)や飲食店・小売店向けの運営管理システムを導入(写真1)。クラウドと連携させ、店長が遠隔からスマホやパソコンで売上状況を確認できるようにした。桟敷席などに設置したネットワークカメラを介して、店内の混み具合も把握できる仕組みだ。

写真1●砂浜で使うためPOSに使うタブレットは防塵防滴対応にした
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 それだけではない。開発や販売に携わる社員がタブレット片手に海水浴客から注文を取り、厨房にも立つのがセカンドファクトリー流だ。日々の店舗営業で生まれる悩みや失敗の一つひとつが、製品・サービスの改善につながる宝の山になっている。

 セカンドファクトリーが海の家を開くのは、今年で4年目。同社の大関興治社長は「技術ありきでは上手くいかない」と話す。最初にネットワークカメラを設置した際は、AI(人工知能)を使った画像解析など高度なシステムを想定していた。だが、実際運用するうちに「混み具合やオペレーションの様子が分かるだけでも十分に役立つ。顧客の悩みは最新技術よりもっと手前の段階にある、と実感した」(大関社長)。

 よくある顧客へのヒアリングや現場観察だけでは、中々こうはいかない。「顧客目線で考えよ」「顧客の現場を肌感覚で知ろう」。桟敷席で大関社長から話を聞いている間、脳裏に浮かんできたのは、かって取材したIT企業の経営者たちのこんな言葉だ。真理だが、それをどこまで追求できているか。セカンドファクトリーのように、顧客である飲食店の「同業者」になってまで顧客目線を、という徹底した取り組みは少ない。

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