配信が始まるや否や全世界を熱狂させている「ポケモンGO」。かつて任天堂の岩田聡前社長が誓った「母親を敵に回さない」という思いは、薄れてはいないだろうか
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 任天堂とポケモン、スマートフォン(スマホ)向けゲーム「Ingress」で知られる米ナイアンティックの3社がタッグを組み、2016年7月6日にリリースされたスマホゲーム「Pokemon GO(ポケモンGO)」。先行リリースされた米欧に加え、7月22日に公開された日本でも爆発的なブームとなっていることは、改めて説明するまでもないだろう。

 記者は、さすがに「ピカチュウ」くらいは知っているものの、「ポケットモンスター」のゲームやアニメは知らない。それでもこれだけブームになれば気になるもの。記者が普段使っているスマホは残念ながらポケモンGOのアプリに非対応だったため、家族のスマホを借りて試した。

 自宅や職場周辺という身近な環境にポケモンが出没するという設定の面白さ、そして多くのポケモンを収集して育てるという、コレクター意欲をくすぐる成長システム。ポケモンになじみのある人はもちろん、そうでない人も含めて熱狂するのも理解できる。

 一方、ポケモンGOをプレイしながら記者が気になっていたことがある。任天堂の前社長として、専用機一筋の事業モデルからスマホゲームの提供へと舵を切る決断をしたものの、ポケモンGO提供開始のほぼ1年前、2015年7月11日に志半ばで病没した岩田聡氏。その岩田氏が最期まで案じていたであろうポケモンGOに、「岩田イズム」はどれほど反映されているのか、という点だ。

「脳トレ」「Wii Fit」から続く系譜

 岩田イズムをしっかり継承していると感じた点は、ユーザーが「歩く」という要素をゲームに取り込んだ点だ。ポケモンGOでは、多くの種類のポケモンを探したり、駅や店舗、観光名所などに設けられた「ポケストップ」で補助アイテムを入手したり、「ポケモンのたまご」をふ化させたりするために、歩き回ることが必要となっている。

 岩田社長時代の任天堂は、健康面を強く意識したゲームを次々に世に送り出してきた。2005年に発売した「脳を鍛える大人のDSトレーニング」は脳トレブームを巻き起こし、携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」が発売後20カ月で国内出荷1000万台を達成するうえで大きな役割を担った。さらに同社は2006年に「Wii Sports」、2007年に「Wii Fit」と、全身を動かしながら遊べるゲームを出し、据え置き型ゲーム機「Wii」の普及に大きく貢献した。

 今回のポケモンGOは、ハードウエアがスマホとなったことを生かして、家の外で体を動かすという提案をしてみせて、やはり大ヒットとなっている。提携先としてナイアンティックを選んだ任天堂やポケモンの関係者の思い、そしてそれを受けてポケモンGOを作り上げたナイアンティックの開発陣の思いは、岩田イズムをしっかり受け継いだものだといえよう。

 一方でポケモンGOでは、生前の岩田氏が強くこだわりを見せていたある考え方が、希薄化しているとも感じた。

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