休日のとある昼下がり。自宅にいると、ときどきこんな放送が聞こえてくる。

 「こちらは防災〇〇です。88歳の男性で××にお住まいの□□さんが行方不明になっています。上着は灰色のジャンパー、下は茶色のズボンをはいています。身長は170cmくらい。髪は白髪交じりの短髪です。特徴は黒色のスニーカー、黒色のキャップです。お心当たりのある人は、〇〇警察署までご連絡ください」。

 認知症の高齢者が行方不明になったことを知らせる、自治体の防災行政無線による放送である。

 厚生労働省によると、認知症の人は2012年時点で462万人(65歳以上の高齢者の7人に1人)、さらに10年後の2025年には700万人(同5人に1人)に達するとの推計もある。認知症高齢者に対する介護・ケアは、今後ますます大きな社会問題になることは間違いない。

 中でも徘徊の問題は大きい。自宅や施設で介護していた高齢者が知らぬ間に単独で外出し、どこに行ったか分からなくなってしまうという問題だ。外出中に事故に巻き込まれてしまう危険もあり、一刻も早く探し出さなければならない。介護者にとっては大きな負担となる。

 こうした徘徊を、ITを駆使して防止しようとする取り組みが始まっている。認知症高齢者向けのグループホーム事業や老人ホーム事業を手がけるメディカル・ケア・サービス(MCS)が実用化に向けて構想を進めている「お互いさまシステム」である。

外出をいち早く検知してすぐに追いかける

 MCSのお互いさまシステムとは、Bluetooth Low Energy(BLE)を使ったビーコン発信器を活用し、認知症高齢者の単独外出をいち早く検知したり、徘徊している場所をいち早く発見したりする仕組みを備えたシステムである(図1)。2014年11月から12月にかけて中野区や旭川市などで同システムを使った実証実験を行い、一定の効果があることを確認した。

図1●MCSが構想する「お互いさまシステム」の概要
システムとしてまだ完成したものではないが、実証実験はこうした形態で行った。ビーコン発信器や画面は開発途上のもの。
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